2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700466
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松崎 高志 Osaka University, 産業科学研究所, 助教 (90456939)
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Keywords | ナノバイオロジー / ナノメディスン |
Research Abstract |
本年度は、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)のヒト肝臓特異的な感染機構を明らかにするため、酵母由来HBV表面抗原L粒子(バイオナノカプセル:BNC)をHBVのモデルウイルス粒子として用い、以下の実験を行なった。1) BNCを含む膜コンパートメントの同定とプロテオーム解析、2) BNCの膜透過ペプチドの同定。1) に関しては、BNCを取り込んだ培養ヒト肝細胞をホモジナイズし、OptiPrep密度勾配遠心法によって分離することにより、BNCを特異的に含む膜成分の分離を試みた。しかしながら、BNCの局在が広くブロードとなり、特定の膜画分に濃縮することが出来なかった。そのため、代表者は鋭意検討を重ね、ヒト肝臓細胞の膜画分をショ糖密度勾配遠心法によって分離し、可溶化して得られた膜タンパク質画分を、BNCをカラム樹脂に結合させて作成したタンパク質カラムへ流し、BNCに特異的に結合する膜タンパク質を探索した。その結果、約45kDa、48kDa、55kDa、260kDaの4種の結合タンパク質を単離する事に成功した。現在、質量分析計による解析を進めている。これらのタンパク質はHBVの新規受容体である可能性が高く、同定すればHBVの新しい治療法の開発に繋がる。2) に関しては、これまでの研究で明らかとなった、HBV表面抗原Lタンパク質のN末部位をカバーする合成ペプチドを複数合成し、代表者が独自に開発したペプチド提示リポソームを用いた膜融合評価実験法によって膜融合能を評価した。その結果、Lタンパク質のN末24アミノ酸をコードするペプチドが、高い膜融合活性を示す事が明らかとなった。この結果は、HBVの感染機構を理解する上で極めて重要な知見であり、またHBVの感染を阻害する新たな治療薬(膜融合阻害薬)の開発に繋がる。この様に、本研究は研究計画に従って順調に進捗している。
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