2009 Fiscal Year Annual Research Report
病変を伴う微少血管内での人工赤血球輸送プロセスに関する数値流体力学的研究
Project/Area Number |
21700467
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
百武 徹 Yokohama National University, 工学研究院, 准教授 (20335582)
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Keywords | 微小循環 / 格子ボルツマン法 / 人工赤血球 |
Research Abstract |
本年度は,ナノカプセル型人工赤血球とヒト赤血球を含む微小血管分岐部内の流体シミュレーションプログラムの構築を行った.2次元Y型微小血管分岐部モデル(主流血管の直径D_0=20μm,分岐(娘)血管b_1, b_2の直径D_1=D_2=15.87μm,分岐角度はα_1=α_2=45°)を作成し,分岐部内における赤血球と人工赤血球の挙動を追跡することで,分岐後の各血球分配特性を調べた.特に,病的な場合として赤血球集合体のモデル化を行い,分配比にどのような影響を与えるかを調べた.流体の解析には混相流解析に有効な格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method)を適用した.赤血球と流体の連成解析にはImmersed boundary法を,赤血球膜にはneo-Hookeanモデルを用いた.各血球間のインタラクションにはMorseポテンシャルを適用した.赤血球のみを流した場合,赤血球は変形による軸集中の結果,管壁面付近に血しょう層の形成が見られた.また,分岐後は血球分配の偏りが見られ,血しょう分離が生じた.さらに,赤血球集合により,分配の偏りが正常の赤血球に比べて増加した.一方,赤血球の半分を同体積の人工赤血球に置換した場合,赤血球はさらに偏りを示したが,人工赤血球は主流部において血しょう層に多く分布しているために,一部は赤血球の行き届かない分岐部へと分配され,結果として酸素分配の偏りが解消された.この傾向は,赤血球集合の場合も同様に見られた.これらの結果は,人工赤血球への置換が微小循環系における酸素供給の不均一性改善へ貢献していることを示唆している.
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