Research Abstract |
本年度は,病的な状態の赤血球を含む微小血管内にカプセル型人工赤血球を投入した際の効果について数値解析を行った。解析手法としては流体に対しては格子ボルツマン法を適用,赤血球に関しては、埋め込み境界法を用いて赤血球の変形を計算した.赤血球集合に関してカットオフ半径内において赤血球表同士にMorseポテンシャルが働くと考え,赤血球集合現象を再現した.直径20μmの微小血管を考え,そこに赤血球と人工赤血球の混在した流れを作り,人工赤血球がどのような挙動を示すのかを調べた.解析の結果,赤血球の変形に伴う軸集中および血漿層の形成が再現できた.集合モデルでは赤血球が集合体を形成し,管中心部を流れる様子が見られた.さらに,人工赤血球に置換することにより,血漿層はさらに厚くなり,この血漿層部分に人工赤血球が多く分布するようになった.これは赤血球の軸集中により人工赤血球が管壁へと移動した結果であり,この管内分布の違いが微小血管系における各粒子の流動特性に大きな影響をもたらすと考えられる.次に,人工赤血球の半径向拡散係数を調べた.解析の結果,ヘマトクリットの増加とともに人工赤血球の半径方向拡散係数は増加した.これは赤血球と人工赤血球とのインタラクションの結果,人工赤血球が半径方向へ拡散していることを意味している.一方,ヘマトクリットが15%以上になると,拡散係数は減少した.これは,赤血球の増加とともに,人工赤血球の半径方向への移動する空間が減ったことが原因であると考えられる.また,正常モデルと赤血球集合モデルを比較すると,ヘマトクリットの増加(人工赤血球の割合の減少)とともに拡散係数が増加し,さらにヘマトクリットが増加すると拡散係数が減少するという傾向は同様であったが,拡散係数がもっとも大きくなる置換率が異なった
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