Research Abstract |
赤血球の力学的特性の定量評価方法の提案は,循環器疾患の解明や予防医学の観点から非常に有効な手段になると考えられている.赤血球の力学特性は,赤血球への力学負荷の大きさとその時の形状変化のつりあいの関係から,推定することが可能となる.本研究は,周期的な力学負荷を与え,その形状変化(楕円形)を顕微鏡および高速度カメラで撮影し,撮影された形状変化のLength(L:流れ方向の長さ)およびWidth(W:流れに方向に垂直な長さ)と負荷したせん断応力の大きさから,赤血球の粘弾性推定方法の構築を目指している.昨年度,試作したせん断応力負荷機構(逆レオメータ法:平行-平板が同時に逆相に動く方式)の平行-平板の流れ場の問題点(赤血球の流れ方の再現性)を改善するために,平行-平板の上下移動機構の排除を行った.その結果,改良前に比べ視野内に留まる赤血球数の数は増加した.しかし,平行板の動きが反転する瞬間に赤血球が視野内を上下に振動する問題が発生した.今後,振動問題を解決するために平行-平板のガラス保持方法などを改善することが必要となった.赤血球の粘弾性推定では,画像処理と赤血球の弾性モデルについて検討を行った.画像処理では,繰返し変形する赤血球のせん断応力負荷に対して撮影時間ごとに,LおよびWについて,平均値としてまとめて計測を行っていた.今年度は,個々の赤血球について粘弾性が推定できるように,それぞれに赤血球で計測できるようにプログラムの一部を改良した.赤血球の2次元モデルは,まず,赤血球を平板モデルと仮定し,これまで撮影された画像を用いて弾性の推定を行った.平板の駆動周期は2Hz、最大せん断応力は6.67Paにおいて、視野内の4個の赤血球について1周期分のDI(Deformation Index=(L-W)(/L+W))求め、また、実験結果からポアソン比などを求め理論的なDIを算出し、実験値と理論値のDIについて相関係数Rを求めた。その結果、R=0.71となり,高い相関性を確認することができた.しかしながら,in-vitro実験の回数が少ないため,今後は,様々なせん断応力負荷条件(周波数,負荷の大きさ)の画像データを用いて,赤血球モデルの検証を行う予定である.
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