2010 Fiscal Year Annual Research Report
高速マイクロ流れを用いた赤血球破壊リアルタイム可視化と溶血力学モデルの実験的構築
Project/Area Number |
21700474
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
八木 高伸 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (00468852)
|
Keywords | 赤血球 / 細胞破壊 / マイクロ / 溶血 / 血液 / 可視化 / 衝突 / せん断応力 |
Research Abstract |
流体力による血球細胞の損傷や活性化は,血栓等の動脈疾患の温床となるためメカニズムの解明が求められる.せん断応力が破壊の主因子とされてきたが,治療機器内を輸送される細胞には,せん断力だけでなく壁面間や細胞間で衝突力が発生する.本年度,ヒト新鮮赤血球を用いて,以下の成果を得た. 1)流速に応じて変化する衝突動態:マイクロチップにシースフローを組み込み,高速流動する個々の細胞を単列に配置させることで形態の制御性を確保し,衝突動態を定量解析できる新しい試験系を確立した.今後,正常細胞と異種・疾患細胞とを比較できるようになり,細胞破壊の予測・予防の基盤が整ってきた.衝突速度0.2,1.0,3.0m/sで比較すると,衝突動態は全く異なり,低速では,伸長赤血球が壁極近傍で球状化し圧縮される(球状圧縮).中-高速では,軸方向に変形し,中速ではくびれ圧縮,高速では座屈を伴う紡錘圧縮となることが分かった.支配パラメータを抽出し衝突動態を予測できる可能性を示し,細胞破壊の予測・予防の指標化に向けた基礎データを蓄積できた. 2)衝突形態と破壊傾向の関連性:衝突後の細胞を顕微鏡観察すると,球状圧縮では,約7割の細胞が正常を示したのに対しくびれ・紡錘圧縮では約9割を超える細胞が異常形状を示した.異常細胞には骨格の破綻や断裂が示唆され.高速衝突では衝突直後の細胞膜の断裂の可視化に成功した.破壊の臨界衝突速度の存在を示唆している. 3)溶血細胞の統計解析法の確立:フローサイトメトリーにより,衝突細胞では前方・側方散乱が共に著しく低下することが分かってきた.影響因子を決定していく作業が必要だが,溶血細胞を半自動的に大規模統計解析できる可能性が示唆された. 本研究より細胞破壊には負荷の形態や細胞の変形能を考慮する重要性が明確となった.また,本実験データが,粒子法や分子動力学法の数値計算技術の進展に貢献し始めた.
|
Research Products
(3 results)