2010 Fiscal Year Annual Research Report
硬組織再生医用材料の表面科学と骨芽細胞・破骨細胞分化機能制御機構の解明
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21700485
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中村 美穂 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40401385)
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Keywords | 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 表面科学特性 / ぬれ性 / バイオセラミックス / 細胞接着 / 細胞遊走 / 細胞分化 |
Research Abstract |
本研究では、リン酸カルシウム系バイオマテリアル上における骨芽細胞及び破骨細胞挙動を明らかにし、表面科学特性が両細胞に与える影響について検討することを目的とした。検討試料として、現在臨床応用されているハイドロキシアパタイト(HA)、βトリリン酸カルシウム(βTCP)、生体硬組織の無機成分と最も近似しているため注目を集めている炭酸アパタイト(CA)を選択し、分極処理を行った試料について表面科学分析を行った。分極処理前後でセラミックス固体表面の結晶性、構成元素、結晶粒径、表面粗さは変化しないが、水に対するぬれ性が向上した。さらに、ぬれ性の向上は、材料の種類依存性がみられず、分極による電荷蓄積量に依存していることも確認された。 骨芽細胞挙動評価では、分極HA上において骨芽細胞接着能・遊走能が促進されたことが確認された。これは、固体表面におけるぬれ性向上によって細胞接着性タンパク質吸着が増加し、その結果、接着斑形成を介して接着性・遊走性が促進されたと考えられる。骨芽細胞分化評価においては、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現解析により、分極によって正電荷が誘起された面において促進傾向がみられたため、今後はその詳細な機構解明を行う予定である。破骨細胞評価では、成熟破骨細胞に特異的に見られるアクチンリング形成態がセラミックスの種類によって異なることが観察された。接着形態計測、分化マーカー発現解析、吸収窩体積の定量解析を行った結果、CA上で破骨細胞が分化・活性化されていたことが確認された。この現象には、各試料の表面科学特性のみならず、材料特性を含む他の要因も関与していると考えられるため、表面にとどまらない詳細な検討が必要である。 これらの研究から従来確立されていなかった破骨細胞評価法確立の一助となること、得られた知見により細胞挙動を制御する新たなマテリアルデザインの可能性が期待される。
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Research Products
(16 results)