2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体用ジルコニウム合金の高耐食性化と腐食機構の解明
Project/Area Number |
21700486
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
堤 祐介 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (60447498)
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Keywords | 生体用金属材料 / ジルコニウム / 耐食性 / 腐食 |
Research Abstract |
チタンと同族の元素であるジルコニウムは、新たな生体用金属材料として期待され、近年になり急激に主および副成分としての使用頻度が高まっている。溶出イオンが生体へ及ぼす影響を考慮すると、金属材料にとって耐食性は非常に重要な性質である。しかしながら、体内環境を模擬した条件におけるジルコニウムの腐食挙動に関する報告はほとんどない。本研究は、この問題に対し、様々な組成のジルコニウム基合金を作製し、擬似体液中の耐食性を詳細に評価することで、ジルコニウムの耐食性を左右する添加合金元素の種類や濃度に関するデータを広範囲に収集・蓄積すること、およびこの結果を応用し、生体中で非常に高い耐食性を発揮する新たなジルコニウム合金を開発すること、さらに、これまでほとんど明らかにされてこなかったジルコニウムの擬似体液中における腐食メカニズムを解明することを目的とした。 研究の最終年度となる平成23年度は、前年度に引き続き、ジルコニウムの耐食性に及ぼす添加合金の種類とその濃度の影響について、既存のジルコニウム合金に応用し、その効果を検証することを試みた。塩化物が存在する環境で耐食性に問題があり、生体材料としての応用が困難であると考えられていたジルコニウム基金属ガラスに対し、白金やパラジウムだけでなく、ごく微量の金や銀の添加も、合金の耐食性の改善に有効であることを確認した。さらに、優れた機械的性質、耐食性と生体安全性、生体適合性を兼ね揃える材料としてジルコニウム-ニオブ合金に微量の白金もしくはパラジウムを添加した新たな合金を提案した。 前年度3月に発生した大震災の影響で、本来であれば禁忌とされていた原子炉の冷却に海水が使用されたことを受け、被覆管であるジルコニウム合金の塩化物環境における耐食性についての知見の共有が必要となったことから、招待講演にて本課題の成果をとりまとめた内容を発信した。
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