2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700488
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 和明 京都大学, 再生医科学研究所, 研究員 (00432328)
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Keywords | 凍結保存 / 幹細胞 / 両性高分子 |
Research Abstract |
ポリリジンを無水コハク酸と反応させることによりカルボキシル基を導入し、様々なカルボキシル基導入量のカルボキシル化ポリリジンを作成した。このカルボキシル化ポリリジンを用いたマウスおよびヒトiPS細胞の凍結保存を行った。マウスiPS細胞は緩慢凍結方法において、カルボキシル化ポリリジンがジメチルスルホキシド(DMSO)の代替物質として機能することを確認した。つまり、血清、DMSOを全く含まず、カルボキシル化ポリリジンのみで凍結保存が可能であり、分化能や未分化性に影響を与えないことも確認した。また、エチレングリコールを添加することにより相乗効果が得られ、これまで以上に凍結保存効率を高めることが可能であった。次にヒトiPS細胞の凍結保存を行った。ヒトiPS細胞ではコロニーをばらしてシングルセル状態にするとアポトーシスを起こすことが知られているため、通常コロニーのまま凍結保存される。この場合、生存率はわずかに1%以下となることが知られているが、カルボキシル化ポリリジンを用いても改善は困難であった。また、シングルセルの状態でもROCK阻害剤を添加すると培養が可能なことを利用して、シングルセルで凍結し、解凍後にROCK阻害剤添加培養を行うことで30%前後の生存率が確保されることが報告されている。我々はDMSOの代わりにカルボキシル化ポリリジンを用いたが、単純にDMSOの代替物質としては機能せず、エチレングリコールやスクロースなどの添加物を種々工夫することでDMSOフリーのヒトiPS凍結保護液を開発した。このことから、細胞によって凍結に対する障害は異なること、また、カルボキシル化ポリリジンがDMSOとは異なる機序で細胞凍結保護を行っていること示唆された。温度を降下させながらのNMR測定により、カルボキシル化ポリリジンはDMSOやエチレングリコールなどの既存の凍害保護剤に比べて水の保持機能が弱い一方、凍結濃縮時の塩化物イオン、ナトリウムイオンをトラップし、浸透圧が急激に上昇することを防いでいるような知見が得られた。今後はこの知見をさらに詳細に解析し、機序の解明の研究を行いたいと考えている。
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Research Products
(4 results)