2009 Fiscal Year Annual Research Report
有効かつ安全なナノ医薬品の開発を目指した、ナノマテリアルの生殖発生毒性評価
Project/Area Number |
21700489
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 靖雄 Osaka University, 臨床医工学融合研究教育センター, 特任講師(常勤) (00392308)
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Keywords | ナノマテリアル / 生殖発生毒性 / DDS医薬 |
Research Abstract |
昨今のナノテクノロジー技術の発展により、ナノマテリアルを用いた医薬品開発が盛んに試みられている。一方で最近、ナノマテリアルが、従来までのマイクロマテリアルとは決定的に異なった体内・細胞内動態特性を示してしまうため、予期せぬ毒性を招いてしまうことが明らかとされつつある。しかしながら、現在のナノマテリアルの安全性研究は、個々のナノマテリアルを実験動物に投与した際に生ずる急性/亜急性/慢性毒性といった一般毒性の評価に関する知見のみが散在しているのが現状であり、免疫毒性、遺伝毒性、生殖・発生毒性といった特殊毒性に関する知見はほぼ皆無であると言っても過言ではない。そこで本研究では、粒子径の異なるナノシリカをマウスに投与した際の生殖器官・胎児への集積性、胎盤通過能を評価した。蛍光修飾された直径70nmの非晶質ナノシリカを、胎盤が形成され安定期に入った妊娠16日目のマウスに尾静脈内投与し、in vivo imagingにより体内動態を観察した。その結果、肝臓で強い蛍光が観察され、肝臓への集積が認められた。一方で、未処理群と比較して胎盤で強い蛍光が観察され、直径70nmのシリカは胎盤にまで移行することが示唆された。次に、より詳細な体内動態を解析するため、透過型電子顕微鏡を用いてシリカの局在を評価した。in vivo imagingと同様に非晶質ナノシリカを妊娠後期のマウスに尾静脈内投与し、出生直前に帝王切開により胎盤と胎仔を回収し、胎盤への移行を観察した。その結果、直径70nmのシリカは、胎盤の栄養膜層や迷宮層部分において局在が確認された。また、幾つかの粒子が集団で凝集して存在する様子も観察された。胎盤は胎仔の発育に重要な役割を担う組織であるため、シリカが胎盤へと移行することにより、胎仔へ影響が及ぶ可能性が示唆された。
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