2010 Fiscal Year Annual Research Report
有効かつ安全なナノ医薬品の開発を目指した、ナノマテリアルの生殖発生毒性評価
Project/Area Number |
21700489
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 靖雄 大阪大学, 臨床医工学融合研究教育センター, 特任講師(常勤) (00392308)
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Keywords | ナノマテリアル / 生殖発生 / DDS医薬 |
Research Abstract |
昨今のナノテクノロジー技術の発展により、ナノマテリアルを用いた医薬品開発が盛んに試みられている。一方で最近、ナノマテリアルが、従来までのマイクロマテリアルとは決定的に異なった体内・細胞内動態特性を示してしまうため、予期せぬ毒性を招いてしまうことが明らかとされつつある。しかしながら、現在のナノマテリアルの安全性研究は、個々のナノマテリアルを実験動物に投与した際に生ずる急性/亜急性/慢性毒性といった一般毒性の評価に関する知見のみが散在しているのが現状であり、免疫毒性、遺伝毒性、生殖・発生毒性といった特殊毒性に関する知見はほぼ皆無であると言っても過言ではない。さらに、リスク評価の基盤となる体内動態解析が全くなされておらず、ハザード情報のみで安全性が議論されている状況である。そこで本研究では、有効かつ安全なナノ医薬の創製を最終目的として、酸化チタンをマウスに投与した際の生殖器官・胎仔への集積性、胎盤通過能を評価した。直径35nmの酸化チタンを、胎盤が形成され安定期に入った妊娠16日目のマウスに尾静脈内投与した後、出生直前に帝王切開により胎盤と胎仔を回収し、透過型電子顕微鏡を用いて酸化チタンの局在を評価した。その結果、直径35nmの酸化チタンは、胎盤の栄養膜層や迷宮層部分において局在が確認された。また、幾つかの粒子が集団で凝集して存在する様子も観察された。胎盤は胎仔の発育に重要な役割を担う組織であるため、酸化チタンが胎盤へと移行することにより、胎仔へ影響が及ぶ可能性が示唆された。
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