2011 Fiscal Year Annual Research Report
癌/精巣抗原を標的とした新しい癌早期診断システムの構築
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21700510
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
福山 隆 北里大学, 北里研究所メディカルセンター病院, 上級研究員 (10462251)
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Keywords | 癌 / 早期癌診断 / 癌/精巣抗原 / 発癌初期状態 / 発癌因子 / Helicobacter pylori / CagA / MAGE-A3 |
Research Abstract |
我々は、早期癌診断方法の確立を目指している。その診断方法に用いる標的分子として、癌/精巣抗原が最適だと考えている。我々は前年度までに癌/精巣抗原MAGE-A3は、H.pylori感染によって発現が上昇するのではなく、H.pylori感染によって悪性形質獲得を伴った場合に発現が上昇することを報告した。この結果は発癌因子に感作された非癌細胞を偽陽性として判定することがないことを示している。なお、今後の検討項目として、発癌因子特異的な特定の癌/精巣抗原の誘導、および、MAGE-A3発現を誘導したH.pyloriの構成因子の同定が挙げられる。当該年度は、MAGE-A3の発現誘導に関与したH.pyloriの構成因子としてcagAに注目し、cagAによるMAGE-A3の発現変化について検討した。 H.pylori NCTC11637株のcagA遺伝子を欠損したΔcagA株およびcagAを宿主細胞に移送する際に必須であるvirD4遺伝子を欠損したΔvirD4株をMeth-A細胞に接種した場合のMeth-A細胞中のMAGE-A3の発現についてリアルタイムPCR法にて検討した。ΔcagA株およびΔvirD4株いずれを接種したMeth-A細胞においてもM.O.I.100および30でMAGE-A3の発現が認められた。なお、ΔcagA株およびΔvirD4株を接種したMeth-A細胞の培養上清中から、cagA遺伝子およびvirD4遺伝子は検出されなかったため、各欠損株への標準株のコンタミネーションによるMAGE-A3の発現誘導ではないことがわかった。以上の結果から、MAGE-A3の発現誘導にはcagA非依存的経路が存在すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、癌/精巣抗原が早期癌診断の標的として適しているかを検討するものである。現在までの研究結果から、悪性形質を獲得した細胞に限り、発癌因子暴露直後に癌/精巣抗原が発現することがわかった。本結果は、癌化した細胞のみにおいて、癌化直後に癌精巣抗原が発現することを示しており、癌/精巣抗原が早期癌診断の標的として適していると考えられる。現在までに本研究の目的を達成できたため、評価を(1)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、マウスの癌/精巣抗原を検討したものである。今後はヒトの癌/精巣抗原についても同様に、発癌因子感作直後の悪性形質獲得細胞で発現が認められるかを検討する。なお、ヒトの癌/精巣抗原の発現については、その結果が診断における標的候補の選択に直接関与してくるため、全ての癌/精巣抗原の網羅的な発現解析をおこなう。また、本研究から、単一の発癌因子が特定の癌/精巣抗原を発現する可能性を導きだしている。したがって、単一の発癌因子における特定の癌/精巣抗原の発現変化についてもヒトの臨床癌検体を用いて実施する。さらに、他の発癌因子をMeth-A細胞に感作させた場合の癌/精巣抗原の発現パターンについても解析する。
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Research Products
(3 results)