2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700521
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内田 裕 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 助教 (80510578)
|
Keywords | ミラーニューロン / 運動観察学習 / 痙縮 / 手指運動 / 脳卒中 |
Research Abstract |
本研究では、脳卒中上肢片麻痺で痙縮などにより力の適切な脱力に障害のある患者に対して、他者が脱力する視覚情報を提示し、その模倣・観察を行わせることで随意的な脱力制御能力がどのように影響を受けるかを調べることを目的としている。初年度に当たる本年度は、動的な力制御を計測するための実験設備と環境を整え、被験者に提示する脱力を誘発させる最適視覚刺激の作成と、健常者における脱力視覚刺激の力制御への影響を調べた。 上肢麻痺患者と比較するための健常者に行った実験では、スポンジ状の物体を強く握り締める視覚刺激とスポンジ物体を手で持っているが握りしめていない2枚の視覚刺激を1秒から3秒までのランダムな間隔で交互に提示し、出来るだけ早く視覚刺激と同じ力制御を行うという動作を握力計測計で記録した。統制条件として、緑色と赤色の3センチ平方四角形の視覚刺激を同様にランダムな間隔で交互に提示し、緑刺激には、力発揮、赤刺激には脱力という力制御を行わせた。その結果、健常者においては、実験条件、統制条件ともに有意差な差は認められなかった。また、力発揮・脱力刺激提示から力発揮・脱力までの反応時間では、有意傾向ではあるが力発揮までの反応時間が脱力までの反応時間に比してやや遅かった。 同様の課題を脳卒中後軽度上肢麻痺患者2名に行ったところ、実験条件、統制条件間に有意な差は認められなかったが、健常者とは異なり脱力制御が力発揮制御に比して有意に遅延していた。 上記の結果は、顕著な痙縮が認められない脳卒中後上肢軽度麻痺患者においても、力の脱力制御に問題があるということが示唆された。精緻運動に軽度な障害がある軽度片麻痺患者では、力発揮というより脱力制御に問題がある可能性が示唆され、リハビリテーションにおいても脱力制御に注目することで、より精緻な運動制御が向上する可能性が示唆された。
|