Research Abstract |
〔背景〕以前我々は糖尿病腎症モデルラットにおいて運動(EX)とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を併用すると単独より更なる腎保護作用があることを報告したが,メカニズムがまだ十分解明されていない。一方最近では高血圧,糖尿病及び慢性腎臓病において,解糖系から産生されるカルボニル誘導体であるMethylglyoxal(MGO)が重要な役割を果たしていることが注目されている。そこで5/6腎摘除腎不全モデルでARB(olmesartan, Olm)と長期的EXの単独および併用が腎機能及び血漿MGO濃度に与える影響を検討した。 〔方法〕Wistar-Kyotoラットに5/6腎摘を行い,5/6腎摘除腎不全モデルを作製した。コントロール(C)群,EX群,EX+Olm(10mg/kg/day)群と偽手術sham群4群に分け,12週間観察した。EXは速度20m/分の連続走行を1回60分間,1週間に5回行った。2週間毎に収縮期血圧(SBP),尿蛋白排泄量(UP)を測定し,最終日に断頭採血し,血清クリアチニン(Scr)及び血漿MGO濃度を測定した。また,残存腎の糸球体硬化指数(IGS)を算出した。 〔結果〕SBP,UP,Scr,IGS及び血漿MGO濃度はSham群に比較して,C群で有意な高値を示したが,C群に比べEX群及びEX+Olmで有意に減少した。更に,EX群に比べEX+OlmのIGSは有意な低値を示した。全グループのデータについて,血漿MGO濃度は腎障害指標であるIGS,UPおよびScrとの間に有意な相関が認められた。 〔結論〕5/6腎摘除腎不全モデルにおいてEX単独の腎保護効果と,Olm,EX併用による腎保護効果の増強作用が示唆された。OlmとEXの各々単独並びに併用した場合の腎保護作用は血漿MGO濃度とよく関連し,少なくとも一部カルボニルストレスを介してもたらされる可能性が示唆された。
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