2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700525
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高谷 理恵子 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (90322007)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 低出生体重児 / 発達 |
Research Abstract |
本研究は,(1) 早産児の入院期間中・1-2ヵ月時点における自発運動の解析,(2) 入院期間中から退院後の期間を含めた早産児の睡眠研究,(3)早産児のフォローアップによる発達状態の確認,および発達予後と(1)(2)との関係の検討,NICUにおける発達支援の在り方の模索により構成される. 平成24年度も,県内の病院と連携をとり,医療機関スタッフの協力を得ながら,(1)の早産児の入院中の自発運動,さらに満期後2カ月時点の2時点における自発運動のビデオ記録を継続して行った.得られた自発運動のビデオ記録をもとに,乳児の四肢の運動軌跡の時系列データを作成して運動評価の作業を継続して行っている.自発運動のビデオ記録を実施した乳児の中で同意を得られた家族については,3歳時点で(3)のフォローアップによる発達予後の確認を行う準備を整えてきた. また(2) 入院期間中から退院後の期間を含めた早産児の睡眠研究を実施した.0~4歳までの早産児を対象とした調査研究の結果,NICUから退院した早産低出生体重児は,年齢の上昇とともに24時間の睡眠リズムを獲得していることが明らかになった.ただ満期産成熟児を対象にした福田ら(1997)や,2例の早産児の縦断的研究をおこなったTakaya et al.(2009)と比較すると,昼夜の睡眠リズムを獲得する時期にはかなりの個人差があり,比較的遅い時期にゆっくり移行していると思われる子どもが多かった.今回の調査対象の中では昼夜の睡眠リズムの獲得過程について,出生時体重や週齢,発達障害の有無による違いは認められなかった.ただし2例ほど3歳代の子どもで24時間リズムを示さない事例も認められた.24時間の睡眠リズム獲得に問題がありそうな症例については病院側へもフィードバックを行い,可能な範囲でその後の発達予後の調査へと繋げていきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,(1) 早産児の入院期間中・1-2ヵ月時点における自発運動の解析,(2) 入院期間中から退院後の期間を含めた早産児の睡眠研究,(3)早産児のフォローアップによって明らかにされた発達予後と(1)(2)との関係の検討により構成され,(1)から(3)を通して,NICUにおける発達支援の在り方の模索していくことを目的とする. 平成24年度は,(1)のデータ収集を継続するとともに,(2)に関する早産児のデータの分析を行うことができた.先行研究と比較検討することで,早産児特有の24時間睡眠覚醒リズムの獲得過程が明らかにされてきた.今後はNICUの環境を調整することの効果も含めて検討していきたい.さらに(3)についても県内の病院と連携をとり,医療機関スタッフの協力を得ながら,3歳時点で(3)のフォローアップによる発達予後の確認を行う準備を整えてきた. (1)から(3)の調査研究,および早産児の家族へのニーズ調査を通して,NICUに入院する早産低出生体重児の発達を支援するためには,NICUおよびNICU退院後,さらにその後の長期的な発達支援が必要である可能性が見えてきた.今後は早産児の入院期間において実施できるNICUの環境整備とともに,幅広い発達支援のあり方も検討したい. 以上より,当初の研究目的に対する研究計画が実施されており,さらに研究を進める中で見えてきた新たな可能性についても検討を進めている.本研究の目的は達成されてきていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
医療現場においては早産児の長期的なフォローアップシステムが徐々に整ってきているものの,それらは明確な発達障害があり療育指導が必要な子どもたちに限られている.しかし近年,発達に問題がないとされてきた早産低出生体重児の中にも,3歳以降の発達検査において早産児に特徴的な発達が認められることが指摘されており,発達支援の必要性が示唆されている. 今後は,乳幼児期の運動や睡眠状態の解析とその後の発達予後とを照らし合わせることにより早産児特有の発達過程を明らかにするとともに,アンケート等による早産児の家族のニーズ調査により,早産児の発達支援の在り方を模索したい.NICUおよびNICU退院後,さらにその後の長期にわたり早産児の子どもと家族に必要とされる発達支援ついて検討する. 具体的には (1) 早産児の入院期間中・1-2ヵ月時点における自発運動の解析,(2) 入院期間中から退院後の期間を含めた早産児の睡眠研究,(3)早産児のフォローアップによって明らかにされた発達予後と(1)(2)との関係の検討により構成され,(1)から(3)を通して,NICUにおける発達支援の在り方の模索していく.今年度は(1)で自発運動を観察した子どもたちの発達予後調査が徐々に可能になるため,同意を得られる子どもたちの発達予後を可能な範囲で調査したい.乳児期の自発運動の質とその後の発達予後を照らし合わせることで,早産児の発達支援の具体的な方策を模索する.また引き続き早産児の睡眠研究とNICUへの子どもの入院を経験した家族に対するニーズ調査についての検討を行い,早産児の入院期間において実施できるNICUの環境整備や幅広い発達支援のあり方を検討する.
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