2009 Fiscal Year Annual Research Report
体幹と下肢の運動連鎖からみた変形性膝関節症の椅子からの立ち上がり動作の分析
Project/Area Number |
21700532
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
阿南 雅也 Hiroshima University, 保健学研究科, 助教 (10517080)
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Keywords | 変形性膝関節症 / 立ち上がり動作 / 運動連鎖 |
Research Abstract |
本年度は,予備実験の実施,計測システムの構築とその信頼性・再現性の確認を行い,研究プロトコルを作成した.それから,健常若年者の椅子からの立ち上がり動作(STS)の3次元空間での運動学と運動力学,筋電図学の各観点から,STSの運動方略を明らかにし,動作達成に必要とされる頭部-胸部-骨盤-大腿-下腿-足部の運動連鎖をエネルギーの流れの観点から確認した. その結果,まず臀部離床までの体幹前屈運動において,骨盤の遠位部から力学的エネルギーが発生し,骨盤から頭部まで伝達され,その後,頭部から大腿まで伝達される.さらに各体節間のパワーの絶対値はほぼ等しかったことから,頭部・胸部・腹部・骨盤間の力学的エネルギーの伝達効率は高く,力学的エネルギーの流れを巧みに利用していることが示唆された.また,臀部離床前には下腿から大腿へ力学的エネルギーの伝達がみられた,これは頭部から大腿まで伝達された力学的エネルギーを受け止める支柱の働きであると考えられ,大腿に力学的エネルギーを集めることで殿部離床の課題を達成していることが示唆された.臀部離床後は足部から頭部へ力学的エネルギーの伝達がみられ,身体重心の上方移動に寄与していると示唆された.しかし,骨盤・大腿・下腿・足部間においては各体節間のパワーの絶対値には差を認めなかったため,力学的エネルギーの伝達効率は低くなっていると考えられた. 以上より,STSでの各体節間で行われる力学的エネルギーの伝達状況を詳細に把握することが可能であることが示唆された.つまり,機能低下部位の特定および病態部の力学的ストレスを捉えることができ,そのような患者のデータの取得は理学療法の臨床へと還元できる可能性が期待できる.
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