2010 Fiscal Year Annual Research Report
体幹と下肢の運動連鎖からみた変形性膝関節症の椅子からの立ち上がり動作の分析
Project/Area Number |
21700532
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
阿南 雅也 広島大学, 保健学研究科, 助教 (10517080)
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Keywords | 変形性膝関節症 / 立ち上がり動作 / 力学的エネルギーの流れ / 筋活動 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度に作成した研究プロトコルを用いて,変形性膝関節症者と年齢等の属性が同じである健常中年女性との椅子からの立ち上がり動作(Sit-to-stand:以下,STS)における,3次元空間での運動学と運動力学および下肢筋の筋電図学的解析を行い,STSの運動方略の違いを胸部-骨盤-大腿-下腿の運動連鎖をエネルギーの流れの観点から明らかにした. その結果,変形性膝関節症者のSTSは骨盤前傾によって発生される骨盤部の負の筋パワー平均値,下腿前傾によって発生される下腿部の負の筋パワー積分値および平均値がより低値を示した.また,股関節伸展および膝関節伸展によって発生される大腿部の正の筋パワー平均値がより低値を示した.これらのことは大腿部に流れる力学的エネルギーの流れの能力が低下していると考えられる,つまり,骨盤前傾による股関節伸展筋の遠心性収縮や下腿前傾による膝関節伸展筋の遠心性収縮による筋へのエネルギーの蓄積の能力が低下し,さらに股関節伸展筋および膝関節伸展筋による筋のエネルギー変換を速く行うことができていないことが示唆された. 以上のことから,変形性膝関節症者のSTSは体幹前傾によって生じる運動エネルギーを利用する能力が低下し,適切な下腿前傾つまり足関節背屈が発揮できず,その結果として筋によるエネルギー発生の負担が増大していることが分かった.また,変形性膝関節症者は膝関節伸展筋を遠心性収縮だけでなく,股関節伸展筋の遠心性収縮を効率よく行うことができていないことが分かった.つまり,適切な股関節伸展および膝関節伸展筋の効率のよい遠心性収縮の獲得させることが,運動エネルギーを利用したSTSの獲得および変形性膝関節症者の症状軽減および病態進行予防につながると考えられる.
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