Research Abstract |
本研究の目標は,申請者が開発中の目的志向的遅延反応訓練を,前頭連合野のリハビリテーションとして確立することである.そのために本年度は,課題実行中や課題の進行に伴った脳磁場を計測することで,機能改善の背景を成す神経基盤を明らかにすることを目的とした.本年度の研究計画は,(1)本訓練の神経基盤を明らかにできる脳磁図(MEG)記録用の課題やコントロール条件の設定を行う,(2)脳磁図の記録技術を習得,予備実験の実施及びデータ解析であり,この2点について検討した. まず,本訓練の基盤をなすワーキングメモリの要素を含み,MEG測定に適した課題を作成した.課題は,ワーキングメモリや妨害刺激の影響を検証できるよう4パターンを設定した.次に,これらの課題を健常成人10名(平均年齢30.9歳,男女7:3)に遂行してもらいMEGを記録した.MEG計測にはNeuromag社製204ch全頭型Squid磁束計を用いた.その結果,視覚刺激呈示期に後頭部及び頭頂部にて一過性の活動,遅延期間に前頭部にて持続的活動を認めた.これは,ワーキングメモリ課題における注意,記憶の保持などに応じる緩徐な脳活動を脳磁場計測にて明らかにできる可能性を示唆している.さらに,遅延期間に妨害刺激を呈示したワーキングメモリ課題と呈示しない課題を行い,8-13Hzのα帯の背景脳磁場を解析したところ,妨害刺激を呈示しない課題遂行時に後頭部のパワーの増大を認めた.これは,妨害刺激に対するコントロールに後頭部が関与していることを示唆すると考えられる.以上のように,本研究によって目的志向的遅延反応訓練の基礎となるワーキングメモリ課題遂行時の脳磁場を記録するととができ,その神経基盤に迫る一歩となった.次年度は,さらに目的志向的遅延反応訓練の要素を脳磁図で検証し,本課題の神経基盤の解明に努める予定である.
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