Research Abstract |
本研究の目的は,申請者が開発中の目的志向的遅延反応課題(以下,G-DR課題)を,前頭連合野のリハビリテーションとして確立することである.そのために本研究では,G-DR課題の神経生理学的背景を明らかにすることを目的として,G-DR課題に関連した課題を遂行中の脳磁図(以下,MEG)を計測した.MEGは,時空間分解能に優れた非侵襲的脳機能検査法である.G-DR課題の基盤をなすワーキングメモリ課題は,時間経過に伴い,記憶・選択・想起・評価などの過程が展開するため,時空間分解能に優れたMEGを用いることで,様々な過程に応じた脳活動部位の経時的解析が可能となる. 本年度は,G-DR課題の基盤をなすワーキングメモリの要素を含み,MEG測定に適したワーキングメモリ課題遂行時のMEGデータを解析した.その結果,ワーキングメモリ課題遂行時に,頭頂後頭領域にてα帯(8-13Hz)の背景脳磁場のパワー増大を認めた.さらにワーキングメモリ課題中に妨害刺激を呈示する条件を付加し,解析したところ,妨害刺激を呈示することでα帯のパワーが減少することを見出した.その際,被験者の行動に影響がなかったことも示した.これらの結果は,頭頂後頭領域のα帯のパワー増大は,視覚的注意からの開放を反映し,被験者のワーキングメモリ課題の遂行には影響を与えない可能性を示唆している.妨害刺激を含めてワーキングメモリ課題遂行時の背景脳磁場を検討することで,頭頂後頭領域のα帯の活動が果たす役割を明らかにすることができ,G-DR課題の基盤をなすワーキングメモリ機構の新たな一面を明らかにした点で重要性が高い.これらの結果は,現在国際誌に投稿中である.
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