Research Abstract |
避けられない高齢化社会では,脳血管障害により身体に麻痺などの障害を持つリスクが非常に高まる.本研究は中でも上肢運動に焦点を絞り,近年報告された心理物理学的新知見を神経生理学的に実証し,上肢運動学習の真の機序を明らかにすると共に,リハビリテーションの運動学習効果促進のための重要な情報を得ることを目的としている.具体的には,片手ないし両手運動学習に関与する腿部位を同定することを目標とし,今年度はfMRI内で実行可能な運動課題の検討を行った. 被験者10名(男性7名,女性3名,29.7±5.0歳)において,非磁性体の握力計を使用し,片手,両手における発揮握力調節課題を検討した.被験者はオシロスコープを見ながら,2.5秒に一回のリズムで,ターゲットに発揮握力のピーク値が一致するように瞬時に握力を発揮する.その際,初めに片手による比較的大きな力発揮を学習し,その後,両手でそれまでと異なる低い力発揮を再学習する.その後に再び片手によって,直前の両手による低い力発揮と同じ力を発揮することを被験者は要求された.その結果,最後の片手による低い力発揮が要求される段階において,始めに片手で学習した比較的高い力発揮の影響が再度,現れることが分かった. 本結果は同側の手による発揮握力調節課題において,片手で学習したことが両手で異なる力発揮を再学習した後でも,その片手による力発揮時に残存していたことを示している.したがって,到達運動で報告されている先行研究の結果に類似しており,発揮握力調節課題においても同様な結果が得られることが明らかになった.今後は,逆に両手で学習した場合の学習効果やその他の可能性を検討した上で,fMRIによる片手,両手,その両者の学習に関連する脳活動部位を同定する.また,その同定脳部位に阻害刺激を与えながら学習した場合の学習効果について検討する.
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