Research Abstract |
避けられない高齢化社会では,脳血管障害により身体に麻痺などの障害を持つリスクが非常に高まる.本研究は中でも上肢運動に焦点を絞り,近年報告された心理物理学的新知見を神経生理学的に実証し,上肢運動学習の真の機序を明らかにすると共に,リハビリテーションの運動学習効果促進のための重要な情報を得ることを目的としている. 被験者21名(男性13名,女性8名,24.8土5.5歳)において,非磁性体の握力計を使用し,片手,両手における発揮握力調節課題を検討した.被験者はオシロスコープを見ながら,2.5秒に一回のリズムで,ターゲットに発揮握力のピーク値が一致するように瞬時に握力を発揮する.その際,初めに片手による大きな力発揮を学習し,その後両手で小さな力発揮を学習する.その後に視覚フィードバックを無くし,被験者は再び片手によって直前の両手の時と同じ力を発揮することが要求された.その結果,最後の片手による小さな力発揮の段階において,始めに片手で学習した大きな力発揮の影響が現れた.しかしながら,逆に両手で大きな力を学習後,片手で小さな力を学習した後,再度両手にした場合,大きな力発揮の学習効果は消失していた.このことから,先行研究とは異なり,片手の学習は両手の学習によって消失しないが,両手の学習は片手の学習によって消失することが明らかになった.この結果から指の運動学習と腕(先行研究)のそれではその神経機序が異なることが示唆された. 同様な試技をfMRIで実施し,片手-両手-片手試技と両手-片手試技の両手試行時の脳活動を比較した.この時の両手は全く同じ課題を実施しており,事前の片手による力発揮の影響があるか否かの違いが現れると考えられる.その結果,前者において左一次運動野に有意に高い活動を認めた.両手-片手-両手の試技では学習効果が見られなかった事を考慮するとこの部位に学習効果が蓄積される可能性が示唆される.
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