Research Abstract |
本研究では,II型糖尿病モデル動物に対して,有酸素運動を処方し,血糖のコントロールと骨格筋(主に,遅筋に対する)の代謝と毛細血管構築とのクロストークを検証した.結果,血糖値,HbAlcおよび,血中活性酸化代謝物は,糖尿病群と比し糖尿病の運動群は,低値を示した.しかし,何れも正常群と比すると高値をであった.正常群の遅筋であるヒラメ筋の筋線維は,多くのミオシン重鎖I型と少量のミオシン重II型で構成されていた.しかし,糖尿病群と糖尿病の運動群は,すべてミオシン重鎖I型で構成されていた.正常筋の筋線維のミトコンドリア活性は,少量のミオシン重鎖II型が高く,多量のI型は低かった.そして,糖尿病群ではII型は消失し,I型のミトコンドリア活性も正常と比し低かった.しかし,糖尿病運動群では,ミオシン重鎖はI型であるにも関わらずミトコンドリアの活性は正常群や糖尿病運動群のI型よりも高値を示し,結果,筋線維全体でのミトコンドリア活性は正常群より高値を示した.糖尿病の筋毛細血管の,顕微鏡による二次元観察では,正常群と比した筋毛細血管密度に差はなかった.しかし,共焦点レーザー顕微鏡による3次元観察では,筋毛細血管直径の縮小,ねじれの減少が確認され,筋毛細血管流域容量の減少を生じていた.一方,糖尿病の運動群では,筋毛細血管直径,ねじれ,および,毛細血管流域容量は維持されていた.そして,血管内皮細胞増殖因子系やアンギオポイチン系の血管新生因子の上昇が確認された.これらの結果より,糖尿病の運動療法は,血糖コントロールに対して,ある程度の効果は示すがそれだけでは十分でなく,正常域まで低下させることは困難であった.また,筋線維のタイプ変化を防止することはできなかった.しかし,筋毛細血管構築の破綻を防ぐことができ,糖尿病の二次的合併症に対して治療効果が得られることが確認できた.
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