Research Abstract |
本年度前半では体側面に取り付け可能な自重補償機構の製作を行った.開発した装置では装置の軽量化・高剛性化を図ることにより,患者の体重の内の1kg相当を任意の姿勢に対して正確に補償することができる.また,動力伝達機構の高精度化と装置の一体成形加工により,従来の自重補償機構の最大の問題点であった摩擦も大幅に減少させることができ,物理的な限界の90%程度の大きさの可動域で正確な自重補償が可能にかった.しかし,一方で,たとえば10kg以上の体重を支えることを考えると,自重を支えるのに必要なバネが太くなることによって生じる初張力の増大や,動力伝達部にかかる負荷の増大に伴うベアリングの静摩擦の増大により,正確な自重補償を行うことが原理的に不可能であることも明らかになった.また,患者の体重は人ごとに異なるため,福祉の現場に本装置を導入する際には補償重量を容易に変更することが可能であることが求められるが,現行の自重補償機構では変速機を用いてばね定数を仮想的に変更するしかなく,装置を大きくかつ重たくしてしまうという問題があることも明らかになった.そこで,本年度後半では補償することのできる重量が可変で,さらに重量物の自重を正確に補償することができ,剛性が高く,低摩擦な自重補償装置の開発を行った.具体的には,生体の筋における「サイズの原理」を応用した,多段型の自重補償装置の開発を行った.本装置では,ばね定数の異なるバネを直列につなぎ,バネ定数の小さいバネから順に伸ばしていく機構を付加することにより,大変形が可能で,初張力が小さく,ばね定数の大きい理想的な線型バネを仮想的に構成することで,補償重量が大きく,コンパクトな自重補償機構を実現している.本機構の有効性を確認するためパンタグラフ型の試験機を製作し,2段構造のもので,約10kgの自重を正確に補償することができることを確認した.
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