Research Abstract |
高齢者医療費や介護保険費用の高騰から介護予防が求められ,主要な柱に転倒予防が挙げられる.転倒予防が特に必要な対象者は,軽度要介護高齢者と特定高齢者であり,約300万人が該当する.転倒予防には身体機能の観点から下肢筋力と姿勢制御能の向上が重要だが,簡便,安全に計測・評価する計測システムは見られない.そこで本研究では,簡便かつ定量的に計測可能な下肢筋力計測器と姿勢制御能計測器を開発し,データに基づいた定量的な転倒リスク評価手法を開発することを目的とした. 本研究で得られた結果は,(1)健常高齢者73名,虚弱高齢者34名の下肢筋力(足指力,膝間力)計測を行い,下肢筋力計測装置の有効性を明らかにした.さらに得られた結果より,転倒リスク値を算出した.すなわち,足指力24N,膝間力100Nのいずれか,または両方を下回る高齢者は高転倒リスク群に分類されることがわかった. (2)姿勢制御計測装置の開発を進め,歩行のメカニズムに沿った重心軌跡の解析を行った.対象者は若年群,高齢者群の24名とした.その結果,軌跡と荷重値を利用することで,歩行バランスを定量的に数値化できることがわかった.さらに,鍵となるパラメータとして,踵接地時の荷重値と位置,中足部の重心の軌跡(経路),つま先離地時の荷重値と位置に着目して分類を行うとともに,転倒リスク値の算出を行っている.以上の結果を基礎実験とフィールド実験の応用研究から明らかにした.平成22年度にはさらに継続的にフィールドテストを行い,下肢筋力群と歩行バランス群,静止立位による姿勢制御群から見た転倒リスク値を算出し,有効性について評価を行いたい.
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