Research Abstract |
高齢者の転倒予防求められている.転倒予防には身体機能の観点から下肢筋力と姿勢制御能の向上が重要だが,簡便,安全に計測・評価する計測システムは見られない.そこで本研究では,簡便かつ定量的に計測可能な下肢筋力計測器と姿勢制御能計測器を開発し,データに基づいた定量的な転倒リスク評価手法を開発することを目的とした. その結果,1.足指力の右足は健常高齢者群27.7±12.3N,虚弱高齢者群22.3±12.6N,左足は健常高齢者群26.7±9.7N,虚弱高齢者群20.7±10.7N,膝間力は健常高齢者群110.8±21.8N,虚弱高齢者群89.4±34.1Nであった.すなわち,虚弱高齢者群は健常高齢者に比べて,足指力の右足で約20%.左足で23%,膝間力で20%低いことがわかった. 2.計測結果から,足指力の左足を24N,膝間力を100Nと設定することで,オッズ比は6.05であり,敏感度は82.6%,特異度は56.0%の確率で,転倒リスクが高いと考えられる虚弱高齢者をスクリーニングできることが示唆された. 3.開発した歩行機能計測システムを用いて,歩行機能とバランス機能を評価したところ,転倒リスクが高いと考えられる歩行軌跡が確認でき,介入により改善することが明らかになった.今後,さらに深く検証し,自動的な評価が可能なよう開発を行う. 4.これら計測システムを用いて,東京都世田谷区,秋田県男鹿市等にて介入実験を行った.その結果,本システムは身体機能評価に有効であるとともに,対象者へのフィードバックが転倒予防活動に機能することを確かめた. 以上の結果より,身体機能計測システムの基礎を完成させ,その有効性を介入研究により確かめた.さらに,転倒リスク指標の構築を行い,閾値の設定を行った.ここまでで横断的研究が実現でき,今後,縦断的研究により本成果の長期的視点に立った有効性を明らかにする必要がある.
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