2009 Fiscal Year Annual Research Report
運動不振学生の「つまずき」経験と「知覚―運動」能力に関する研究
Project/Area Number |
21700600
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古田 久 Saitama University, 教育学部, 講師 (80432699)
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Keywords | 教育系心理学 / 運動不振 / 運動遅滞 / 体育授業 / つまずき / 運動課題 / 課題分析 |
Research Abstract |
本研究は,運動不振学生(運動が苦手な学生)の体育授業における「つまずき」経験を調査し,運動課題の観点から運動不振の原因を明らかにすることを目的とした。運動不振学生9名をインフォーマントとして面接調査を行った。運動不振の判定には,「大学生版運動不振尺度」(古田,2008)を用いた。面接は半構造化面接法で行い,陸上運動,器械運動,水泳運動,ボール運動,武道,表現運動等の各領域における「つまずき」経験について質問した。研究成果の1例としてMさんについての調査結果を報告する。 Mさんは19歳の国立大学文系の小柄な女子学生で,小学校から現在まで音楽系のクラブに所属している。習慣的に行う身体活動は大学の授業(スポーツ実技)のみで,それ以外に定期的にスポーツ等をすることはない。体育やスポーツをするのは小学校低学年の頃から嫌いである。その理由は,足が遅いために運動会の短距離走でビリになることがあり,それが嫌で体育やスポーツが嫌いになったとのことであった。「つまずき」経験として挙げられた主なものは次の通りであった。1)陸上運動の短距離走においては,幼少期から遅かったため無力感が形成され,走ること自体に対して消極的になっている。2)水泳運動の平泳ぎにおいては,足の動作及び手と足のコンビネーションをどのようにするかイメージできない。3)ボール運動においては,各種目に共通してボールの飛来やバウンドにおけるコースや落下地点の予測が困難なため,ゲーム展開についていけない。4)剣道の面打ちにおいては0防具の装着により動きが制限され,竹刀をうまく振り上げることができない。 現在のところ,運動不振の原因やその解決法はほとんど明らかとなっていない。上記のような事例研究を蓄積することにより,運動不振学生の「つまずき」の原因解明と解決法の考案に貢献できると考えられる。
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