Research Abstract |
平成23年度は,本研究課題の最終年度であった.体育授業と肯定的な学級集団の育成についての理論的な結びつきについて検討するとともに,東京都,埼玉県,千葉県の現職教員とともに「共同研究者」としてともに授業研究を展開する組織体制を確立し,授業実践および観察記録,分析考察を行った.その概要を以下に示す; ○体育授業と学級集団づくりの結びつきについて:このことについては従来から指摘されてきたが,本研究ではこの両者を結ぶ共通項として,高橋(2010)の「体育授業の基礎的条件」および河村(2010)の「集団を規定する要因」に求め,クラスの「ルール」(約束事)と肯定的な「リレーション」(人間関係)の確立が,学級集団の育成において共通する前提であることを導いた.そして体育授業の特性を踏まえて,この「ルール」「リレーション」の確立された中で意味のある体育的内容の課題解決が行われることによって,体育授業が学級集団づくりに対して,より大きな影響力をもつことを指摘するに至った. ○アクション・リサーチの意義について:本研究における実践研究を通して,佐藤(1998),秋田ら(2000)が示唆するように,研究者と実践者が同じ地平に立ち,「共同研究者」として授業改善に取り組むことは,実践者の立場からすると,自分一人では捉えきれない部分まで研究者の目も用いながら子どもの実態を把握でき,その上で次善の策を講じることが可能になること,しかもより適切な改善策を合議の上,導出できることが確認された.研究者にとっては,これまで示されてきた多くの知見を,実際の教育実践に適用することで,従来の知見をより効果的に応用することができるとともに,それによって新たな実践的知識を蓄積することができるといった利点があげられた.
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