Research Abstract |
本研究では,発達的観点からきょうだいの心理的成長過程を明確にし,運動意欲と環境の関連性および因果関係について新たな知見を生成することを目的とする.具体的には,きょうだい間に生じる運動意欲の差異についての「語り」をピックアップし,以下のような観点について定性的分析を行うものである.きょうだいは,(1)どのような出来事を重要な要因として挙げるのか,(2)いくつの要因を有するのか,(3)ひとつの要因をどのように捉えているのか,(4)要因を重要だと認める個人内基準とは何か.これらを解決していくことによって,運動意欲に影響を及ぼす要因を明確にでき,運動意欲やきょうだいの差異そのものの理解を深めることだけでなく,きょうだいが運動意欲の差異をどのように意味づけ,運動・スポーツに対する考え方・動機づけをどのように変えているのかを明らかにすることができる. 本年度は,従来型の質問紙調査やインタビュー調査だけでなく自由記述文を中心に分析することで,一定の傾向を導きだすことを試みた.分析では,探索的な分析手法としてのテキストマイニングを用い,文章をカテゴリ化することとカテゴリ化データを解析することとした.その結果,運動意欲の高い群では,「好き」「スポーツ」「見る」「上手」「練習」「伸びる」「家族」「付き合う」等のキーワードが導きだされ,低い群では,「仲間」「ライバル」「嫌」等が導きだされた.つまり,運動意欲を高める要因は,スポーツ好きで練習すると上手に伸びること,あるいは練習すると上手に伸びるのでスポーツが好きになったことや,家族がスポーツやキャッチボールに一緒に付き合ってくれたり教えてくれたりしたこと等であり,運動意欲を低くする要因は,ライバルや仲間が嫌であること等であった.したがって,運動意欲の差異が生じる要因は,自分自身の成功体験の認知や,比較や競争の対象となる他者との関係性であることが推察された.
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