Research Abstract |
今年度は,学習者間の相互作用が動作のコツ習得に与える影響について明らかにすることを目的に,スポーツ領域で優れた実績を有する学習者23名(新体操12名,バスケットボール11名)を対象に刺激再生法による調査を実施した.まず,刺激再生法の対象となる場面を特定するために練習場面を録画した.また,練習場面の映像に加え,指導者にワイヤレスマイクを装着し,指導者の発話内容も同時に記録された.次に,分析対象とした場面の画像,映像を学習者に提示しながら,練習中の意識を深く掘り下げながらインタビューを実施した.尚,調査は,対象者に対して,調査の目的,データの使用に関して十分に説明を行い,対象者の同意のもとで進められた.調査終了後,インタビューデータをテキスト化し,定性的データ分析法によって分析を行った.分析の結果,学習者の相互作用が動作のコツ習得に与える影響を示す,1)指標化,2)気づきの喚起,及び3)洗練化の3つのカテゴリーが形成された.1)指標化は,学習者が,言葉で表現できない動作の感覚を他の学習者の動作と対応づけることで,動作のコツを習得しようとしていることを説明するものとして形成された.2)気づきの喚起は,学習者が心理的距離の近い学習者との関わりから,自己の動感へ気づきを得ていることを説明するものとして形成された.最後に,3)洗練化は,学習者が自身の中に取り込んだコツを,他の学習者の動作やイメージと対比させることで洗練し,さらに質の高いコツを習得する必要性を認識してコツを再構築していることを説明するものとして形成された.今年度の調査は,学習者が他の学習者との相互作用を通してどのように動作のコツを習得しているのか,という点に限定されたものであった.次年度は,指導者も調査の対象に加え,学習者の相互作用に対する指導者の関わりについても明らかにする予定である.
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