Research Abstract |
本研究の目的は,学習者と指導者の相互作用が動作のコツ習得に与える影響,及び学習者の相互作用に対する優れた指導者の関わりを明らかにし,最終的に動作のコツの指導モデルを構築することである.今年度は,優れた指導者の学習者に対する関わりについて明らかにするために,優れた指導者は動作のコツの性質及び獲得法に対してどのような信念をもち,選手を指導しているのかについて調査を実施した.調査ではまず,分析対象となる場面を特定するために練習場面を録画した.また,対象者にはワイヤレスマイクを装着してもらい,発話内容も同時に記録した.次に,分析対象とした場面の映像,音声を対象者に提示しながら,インタビューを行った.尚,調査は,対象者に対して,調査の目的,データの使用に関して十分に説明を行い,対象者の同意のもとで進められた.調査終了後,インタビューデータをテキスト化し,定性的データ分析法によって分析を行った.分析の結果,優れた指導者の動作のコツに対する信念を説明するものとして,「学び続ける姿勢」,「自律的な思考の促進」及び「相互応答的な場の構築」の3つのカテゴリーが形成された.優れた指導者には,コツは普遍的なものではなく,選手自らが経験を通して構築するものだという信念がみられた.そのため,本研究の対象者は,自身が選手時代に習得した動作のコツを絶対的なものとするのではなく,選手の特性に応じたコツを指導しようとしていた.そうした信念により,優れた指導者は,常に学び続ける姿勢を持ち続け,選手が自律的に動作のコツを習得できるように支援していることが明らかとなった.次年度は,これまでの研究成果を統合して動作のコツ指導モデルを構築し,その有効性と課題について検証する.
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