Research Abstract |
平成23年度は,平成21・22年度で作成をおこなってきた身体活動実施に関わる他者からの働きかけを測定する尺度の信頼性や妥当性を検討するため,所定の質問票を用いた調査を実施した.調査対象は,静岡県富士市に在住する65歳から80歳までの43,392名の母集団の中から選挙人名簿より等間隔抽出した男女830名であった.郵送法による質問票の配布・回収の結果,回収数(率)は470部(56.6%),有効回収数(率)は459部(55.3%)であった.測定尺度は,身体活動実施を促進すると仮定される(1)協働,(2)情報提供,(3)賞賛,阻害すると仮定される(1)抑制,(2)正当化,(3)強制の計6要因を表わす項目で構成された.被調査者は家族や友人などインフォーマル関係からの6要因の働きかけと,医師や看護師,運動指導者などフォーマル関係からの6要因の働きかけとの計12要因について過去1年間で受けた働きかけめ頻度を5段階評定で尋ねられた.測定尺度の信頼性は、測定尺度を構成する項目の内的整合性を表わす係数であるα係数を算出することで検討した.妥当性は因子的妥当性および基準関連妥当性の観点から検討した.測定尺度の信頼性および妥当性は,フォーマル関係とインフォーマル関係とにわけて検討された.α係数はフォーマル関係からの促進的働きかけ.723,阻害的働きかけ.654,インフォーマル関係からの促進的働きかけ.680,阻害的働きかけ.646であった.因子的妥当性は,仮定された因子構造の検証的因子分析を行うことで評価した.本研究では2因子構造を仮定して分析をおこなった.その結果,フォーマル関係からの働きかけに関する適合度指標は,GFI.967,AGFI.913,CFI,937,RMSEA.103,インフォーマル関係からの働きかけでは,GFI.993,AGFI.980,CFI.995,RMSEA.026であった。基準関連妥当性は,問題としている行動特性と関連のある基準測度と実際に測定された尺度の得点とを比較することによって評価した.本研究では,「運動実施に対する自己効力感」尺度を基準測度とし,合計得点で相関係数を算出した.その結果,フォーマル関係からの促進的働きかけは.274,阻害的な働きかけ.015,インフォーマル関係からの促進的な働きかけは.287,阻害的な働きかけは-.011であった.以上の結果は,本研究の目的であった「高齢者の身体活動実施に影響を与える社会的ネットワーク機能について」,一定程度の成果を残すこととなった.しかし,今後の課題として測定尺度のさらなる精緻化の必要性があげられる.
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