2010 Fiscal Year Annual Research Report
メンタルトレーニングの効果に関する量的・質的データの検討
Project/Area Number |
21700647
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
平木 貴子 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 契約研究員 (00392704)
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Keywords | メンタルトレーニング / 心理的スキル / 実践研究 / 質的データ |
Research Abstract |
本研究は,メンタルトレーニング(MT)実施中のアスリートの心理的変化を量的(心理的競技能力診断検査の尺度得点)・質的(選手の発話)の両側面から検討することを目的とした実践研究である.平成22年度は心理支援を希望するアスリートへの介入を随時行ったが,考察の妥当性を検証するための事例検討を充分行うことができなかった.そのため,事例検討に必要な費用を平成23年度に繰り越し,研究を進めた.平成22年度分の費用で検討した事例(アスリートA,20代女性)を以下に提示する. 感情のコントロールができないといった主訴でAは来談した.Aは,初回面接時に競技場面の課題について「一気に色々言われると何を言われたか覚えてないくらい感情的になってしまう」と指導者からの指示を1つ1つすべて取り入れ,それに対応しようとするけれども,情報量が多すぎて対処できず混乱する様子を語っていた.介入期間中Aは,提供したMT技法を通して自己統制感を失う出来事に対する対処法を学び,繰り返し所属チームのことを語る中で,自分の置かれている状況に対して様々な見方を加えられるようになり,競技面での安定につなげていった.終結間近では競技場面における自己統制感の欠如は改善され,状況に合わせて主体的に戦術を取捨選択できるようになった様子を語っていた. DIPCA得点において,いくつかの心理的スキルでサポート前後の得点低下がみられている.最も得点の減少が大きい勝利意欲についてAに尋ねると「前は『負けられない・勝ちたい』って思っていたけど,最近は持っている力を全部出したいと思うようになった」と勝利意欲に対する意識の変化を語っている.また,勝利意欲に対する重要性も来談当初は「とても重要」としていたのに対し,終結時には「まあまあ重要」と各尺度得点に対する価値の変化を語っている.他の尺度においても,Aにとっての優先順位が明確になり,必要な戦術を取捨選択できるようになったAの変化と重なる結果となっている.
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