2009 Fiscal Year Annual Research Report
海馬ニューロン新生に及ぼす身体運動の効果-エピジェネティクス機構の関与-
Project/Area Number |
21700654
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 幸子 Osaka University, 医学系研究科, 特任研究員 (30348784)
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Keywords | 運動 / 海馬 / ニューロン新生 / 神経栄養因子 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
身体的な運動が記憶・学習を促進することが知られている。記憶・学習の責任中枢として脳内のいくつかの部位があげられるが、最も重要な記憶の場として海馬が知られている。記憶・学習の機能が亢進されるメカニズムに関して、運動によって脳由来神経栄養因子の海馬濃度が増加することが多くの研究で証明されている。さらに、海馬ニューロン新生が運動によって促進されることも確認されている。しかし一方で、長期間の宇宙飛行やベッドレストなどによる慢性的な機械的負荷の減少が海馬の神経栄養因子濃度やニューロン新生にどのような影響を及ぼすかはあまり明らかにされていない。したがって本研究では、後肢懸垂ラットの海馬を免疫組織化学的に解析し、ヒラメ筋などへの機械的負荷の減少が海馬ニューロン新生に及ぼす影響について検討した。また、脳由来神経栄養因子の海馬濃度も測定した。 免疫組織化学的解析では、海馬の顆粒細胞層下の増殖細胞および未成熟ニューロンの数を測定した。増殖細胞数は対照群では成長に伴い減少したが、後肢懸垂群との間に有意な差はなかった。一方、未成熟ニューロン数も成長に伴い減少していたが、さらに後肢懸垂によって有意に減少した。しかし、後肢懸垂解除後には未成熟ニューロン数は同週齢の対照群と同程度だった。加えて、増殖性未成熟ニューロンの数をカウントしたが、増殖細胞と同様に対照群と後肢懸垂群との間に有意な差はなかった。これらのことから、海馬の未成熟ニューロン数は後肢懸垂により可逆的に減少することが示された。一方、海馬サンプル中の脳由来神経栄養因子濃度は、対照群と比較して後肢懸垂群で低い値を示す傾向がみられた。このことから、免疫組織化学的解析で観察された後肢懸垂による海馬の未成熟ニューロン数の減少には、神経栄養因子の海馬濃度の低下が関わっている可能性が考えられる。
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