2010 Fiscal Year Annual Research Report
海馬ニューロン新生に及ぼす身体運動の効果-エピジェネティクス機構の関与-
Project/Area Number |
21700654
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
野村 幸子 大阪大学, 大学院・医学研究科, 研究員 (30348784)
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Keywords | 運動 / 海馬 / ニューロン新生 / 神経栄養因子 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
中枢神経系において、大部分のニューロンと異なり海馬体歯状回の顆粒細胞は生涯をとおして増殖し、記憶学習能などに関連していることが数多くの研究によって示されている。最近の研究から、身体的な運動が顆粒細胞層下の細胞増殖や未成熟ニューロン数を増加させ、認知機能を向上させることが報告されている。反対に、抗重力活動を抑制する実験動物モデルである後肢懸垂では、海馬ニューロン新生を阻害することが明らかにされている。一方で、出生後早期のストレスが生涯にわたって海馬ニューロン新生を抑制することが知られており、成長後よりも前の段階で後肢懸垂を施すことによってより深刻な変化が現れることが予想される。しかし、海馬ニューロン新生に対する後肢懸垂の影響は成長後のラットでしか検討されていない。 したがって、本研究では離乳直後のラットを用いて海馬ニューロン新生に対する後肢懸垂の効果を検討した。離乳期において、海馬体歯状回では発達期のニューロン新生と成体ニューロン新生が同居していると考えられるが、本研究ではまず、離乳直後の歯状回における増殖細胞や未成熟ニューロンの分布を観察し、続いてこれらの細胞に対する後肢懸垂の効果を検討した。 海馬体歯状回の増殖細胞や未成熟ニューロンは、離乳直後において成長後と同様の分布を示しており、この段階ですでに成体ニューロン新生が形成されていることが明らかとなった。増殖細胞数は対照群では成長に伴い減少したが、後肢懸垂群との間に有意な差はなかった。一方、未成熟ニューロン数も成長に伴い減少していたが、さらに後肢懸垂によって有意に減少した。しかし、後肢懸垂解除後には未成熟ニューロン数は同週齢の対照群と同程度だった。これらの結果を成長後のラットと比べると、予想に反して、離乳期の海馬ニューロン新生は後肢懸垂などの環境因子よりもむしろ成長に伴う本質的な影響を受けることが示唆された。
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