2009 Fiscal Year Annual Research Report
実際に起きた膝前十字靱帯損傷のビデオ映像から受傷メカニズムの力学法則を解明する
Project/Area Number |
21700667
|
Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
小笠原 一生 National Agency for the Advancement of Sports and Health, スポーツ科学研究部, 研究員 (70443249)
|
Keywords | 前十字靱帯 / 静力学 / 画像処理 / スポーツ傷害 / 床反力 / 関節モーメント / zero moment point |
Research Abstract |
本研究の目的は実際におきた膝前十字靭帯損傷のビデオ映像を解析して膝に作用した力,モーメントを推定し,この傷害のメカニズムを解明することである.初年度は,(1)膝モーメント推定のためのモデル構築,(2)モデルの精度検証,(3)前十字靭帯損傷の映像収集を行った.(1)今回,膝モーメント推定のために構築したモデルは,オイラーの運動方程式の動的項(慣性項,ジャイロ項)を無視して静的項のみで構成したもので,加速度計算による数値ノイズに影響されず,少ない計算量でモーメントを算出できるという特徴がある.以降はこのモデルを静力学モデルと呼ぶ.また床反力が得られない状況を想定したモデルであるため,床反力およびその作用点は身体重心の加速度から推定した.以上より,画像から得られる運動学データのみに基づき膝モーメントを推定するモデルを用意できた.(2)モデルの精度は,片脚着地時の動作をモーションキャプチャシステムで解析し,ニュートンオイラー法で算出した膝モーメントと,上記のモデルで算出した膝モーメントとを比較することで検証した.その結果,静力学モデルはフォースプレートで計測した床反力データを用いた場合,ニュートンオイラー法で算出したモーメントとよく一致したため,動的項を無視したことによる精度低下は極めて小さいことが分かった.次に床反力を身体重心の加速度から算出して膝モーメントを推定すると,ニュートンオイラー法で算出したモーメントを大まかには再現するものの,着地衝撃に起因する接地直後の膝モーメントの急峻な変化を再現することが出来なかった.(3)今年度収集できた,解析に耐えうる条件を満たした映像は1例のみであった.平成22年度は床反力のモデルの改良(mass-spring-damperモデルの導入)し,実際の画像処理へ適用して膝前十字靭帯損傷時の膝モーメント算出を行う.
|