Research Abstract |
昨年度に計測した長期間(2ヶ月間)にわたる日常生活中の心拍変動データ,身体加速度データ,心理的緊張感の連続計測データを用いて,心拍変動を用いた心理的緊張感評価方法を各個人毎に最適化した.心理的緊張感の回答時刻から512秒前までの間の心拍変動データから各種心拍変動指標値を算出した.ただし,身体活動の影響を取り除くために,平均身体加速度が30mG未満の場合を解析対象とした.また,サーカディアンリズムの影響を取り除くために,心理的緊張感の点数と心拍変動指標値の両方について,同じ時間帯の参照値からの差分(△緊張感,△心拍変動指標値)を計算した.さらに,△心拍変動指標値のデータの主成分得点を計算し,これを説明変数として,△緊張感を算出する重回帰モデルを構築した.データを5-fold cross validation法に基づいて,学習用と非学習用に分けた.学習用データを用いて,各個人毎に,重回帰モデル式のパラメータの値を決定し,その最適化したモデルに対して,非学習用データを用いて,モデルの汎化能力を各個人毎に調べた.その結果,△緊張感の測定値と推定値の相関係数の被験者間平均値は学習データで0.51であり,学習に用いていないデータで0.42であった.さらに,学習データの相関係数が0.5以上であった被験者の学習に用いていないデータの相関係数の平均値は0.50であった. 以上から,長期間にわたる生理心理計測データを用いて,心拍変動を用いた心理的緊張感評価方法を各個人毎に最適化することにより,心理的緊張感の推定能力が向上することが明らかとなった.
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