2010 Fiscal Year Annual Research Report
代謝異常疾患における脂溶性リガンドの作用機序の解明
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21700692
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
足達 哲也 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (60345014)
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Keywords | G-タンパク共役型受容体 / 線維芽細胞 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
メタボリックシンドローム患者の急増が問題視されてきており、メタボリックシンドロームの増悪には、脂肪組織、骨格筋細胞、肝臓および心臓などの臓器の代謝異常による、トータルボディでの代謝のアンバランスが関与するとされている。上述の代謝調節には多くの受容体からのシグナル伝達が考えられることから、これらの臓器に発現する受容体の同定、その受容体のリガンド探索およびその受容体の機能と代謝機構との関連性を明らかすることを目的としている。前年度に引き続き、当該年度では、心臓において、エストロゲンをリガンドとするGPR30の機能性の解明を目指した。当該年度では心筋梗塞で認められる心臓線維芽細胞におけるGPR30の発現とその役割について検討を行った。GPR30の発現は、新生仔単離心臓線維芽初代培養細胞において、心筋初代培養細胞に比して低いレベルであったが、発現することを見出した。線維芽初代培養細胞にGPR30のリガンドであるエストロゲン(1μM)刺激を行った結果、下流のシグナル伝達のERKのリン酸化の亢進が認められ、またエストロゲンの長期刺激において、線維芽細胞の増殖の抑制が濃度依存的に認められた。本研究によって、心臓線維芽細胞においてエストロゲンがGPR30を介して、ERKリン酸化を活性化し、シグナル伝達からnon-genomic作用をもつことが明らかとなり、エストロゲンによる線維芽細胞増殖抑制を明らかにした。メタボリックシンドロームの増悪により心筋梗塞など心血管系疾患のリスクが上昇するが、本研究において、GPR30を介したエストロゲンの心臓線維芽細胞への作用が心血管系の機能保護につながるものと期待できる。さらなる作用メカニズムについては、引き続き検討を進める。
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