2009 Fiscal Year Annual Research Report
定年退職に関連するうつ病予防についての独創的長寿医学研究
Project/Area Number |
21700716
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
笹原 信一朗 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (10375496)
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Keywords | 定年退職 / 首尾一貫感覚 / ストレス対処能力(SOC) / 精神的健康 / 再就職 |
Research Abstract |
われわれは、東京都の某地方公共団体において平成21年3月で定年退職を迎えた地方公務員1,351名に対し、定年退職前の予備調査結果を踏まえ、定年退職前後の精神的健康およびストレス対処能力の変化を明らかにすることを目的とした縦断調査を平成21年6月に実施した。調査内容は職員の基本属性、定年退職後の再就職の有無とその理由に関する質問項目、SDS、首尾一貫感覚(Sense of Coherence : SOC)などについてである。 その結果定年退職後には精神的健康度は改善しており、再就職しなかった群で首尾一貫感覚が向上していた。また、退職後の生活状況では、仕事をしたいとする積極的な理由により再就職をした群では、定年退職前から精神的健康は良好であり定年後も維持していた。しかし、経済的理由から来る消極的な理由による再就職をした群および再就職をしなかった群においては定年退職後に精神的健康が有意に改善することが明らかになった。本結果から定年退職についての漠然とした不安が定年前の精神的健康度に影響し、実際に定年退職を迎えたことで不安が軽減し、精神的健康度が改善する可能性が考えられた。 首尾一貫感覚は精神的健康と密接に関連することが知られているが、これまで30代でほぼ固定され、その後は変化しにくいものであるとされていた。本知見では労働者が定年退職を迎えることにより首尾一貫感覚が向上する可能性が示唆された。また定年退職は環境変化に伴うストレスイベントとして注目されていたが、定年退職自体が精神的健康に悪い影響を及ぼすわけではない可能性が考えられた。これらの結果が広く社会に還元されることで、団塊世代をはじめとした今後定年退職を迎える世代に対するメンタルヘルス対策の一助となると考えられた。
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