2011 Fiscal Year Annual Research Report
定年退職に関連するうつ病予防についての独創的長寿医学研究
Project/Area Number |
21700716
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
笹原 信一朗 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10375496)
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Keywords | 定年退職 / 精神的健康 / ストレス対処能力 / 首尾一貫感覚(SOC) |
Research Abstract |
東京都の某地方公共団体において平成21年3月で定年退職を迎えた地方公務員1,351名に対し、定年退職前の予備調査結果を踏まえ、定年退職前後の精神的健康およびストレス対処能力の変化を明らかにすることを目的とした縦断調査を平成21年6月、平成22年6月に実施したうえで、今年度は平成23年7月に更なる追跡調査を行った。調査内容は職員の基本属性、定年退職後の再就職の有無とその理由に関する質問項目、SDS、首尾一貫感覚(Sense of Coherence: SOC)などについてである。 その結果、定年退職後1年の時点では、精神的健康度は有意に改善し、ストレス対処能力は有意に上昇していたが、退職後2年後では、退職1年後に比べ精神的健康度は有意に悪化し、ストレス対処能力は有意差はないものの低下するという結果であった。また、各時点での軽度抑うつ状態(SDS得点40点以上)者を抽出してみると、それぞれ第1回: 8名、第2回: 7名、第3回: 6名、第4回: 10名であった。抑うつ状態のリスク要因を明らかにするため、定年退職後の第2-4回の3時点で、それぞれ多重ロジスティック解析を行った結果、SOCがオッズ比で1番のリスク要因となっていた。 定年退職はストレスイベントとして注目され、これまで定年退職を迎えた労働者の精神的健康に関する研究は欧米を中心に行われているが、研究によって結果は異なり、我が国でも実証的研究は少ない。本知見では、定年退職自体が精神的健康に必ずしも悪い影響を及ぼすわけではないということが示唆された。また、首尾一貫感覚は精神的健康と密接に関連することが知られているが、本知見では定年退職を迎えた労働者においても、精神的健康度の維持に首尾一貫感覚が関連している可能性が示唆された。これらの結果が広く社会に還元されることで、団塊世代をはじめとしな今後定年退職を迎える世代に対するメンタルヘルス対策の一助となると考えられた。
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