2010 Fiscal Year Annual Research Report
エコロジカル・システムズ理論に基づく子育て環境と子育て意識の研究
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21700723
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
佐々木 尚之 大阪商業大学, JGSS研究センター, 研究員 (30534953)
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Keywords | 子育て / 養育態度 / 子育て支援 / 地域社会 / 家族 / ネットワーク / ワーク・ライフ・バランス |
Research Abstract |
本研究は、エコロジカル・システムズ理論を手がかりに、各地域における子育て支援活動や所得水準などの地区レベルの特性が、子育てに対する個人レベルの意識とどう関連するのかを考察し、介入の可能性を検討する挑戦的な試みである。平成22年度は、昨年度にひきつづき子育て支援に関する事業をおこなっている保育園やNPO法人などの国内外の民間・公的機関を視察し、専門家や利用者の聞き取り調査を行った。日本と他国の子育て事情を比較すると、子育て期の家族のワーク・ライフ・バランスの重要性や社会全体で子どもの育ちを支援する体制の必要性が浮き彫りになった。 研究代表者が専属研究員として実施した日本版総合的社会調査(JGSS)データに基づく予備分析からは、雇用環境の厳しさと子育て環境に間接的な関係があることも示唆された。日本において、婚外子は非常に少なく、婚姻と出産の間には密接な関係があるが、若年層の雇用の流動化は、晩婚化・非婚化しいては少子化につながっていることが明らかになった。 日本の家族の個人化が進むにつれて、世代を超えた接触が減少し、社会的つながりも弱くなってきている。異なる世代との交流の欠如は、多様な意見に接する機会が限定されているためか、他世代に対する理解のみならず、自身の属する世代に対する誤解を招く恐れがある。たとえば、高齢者にくらべて、子どもをもたない30代の未婚者の方が現代の親に否定的な意見をもっている。今後は、若年層における不安定な雇用環境と子育て環境の関係を詳細に検討する。
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