2011 Fiscal Year Annual Research Report
エコロジカル・システムズ理論に基づく子育て環境と子育て意識の研究
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21700723
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
佐々木 尚之 大阪商業大学, JGSS研究センター, 研究員 (30534953)
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Keywords | 子育て / 養育態度 / 子育て支援 / 地域社会 / 家族 / ネットワーク / 性別役割分業 / ワーク・ライフ・バランス |
Research Abstract |
平成21年度の分析結果からは、30代の未婚者が社会の子育て環境の悪化をとくに感じていることが明らかになった。平成22年度の分析結果からは、若年層の雇用環境の厳しさが晩婚化・非婚化につながっていることが明らかになった。つまり、再生産年齢の男女にとって不安定な雇用は、将来の生活設計を立てることを難しくし,家族形成が起こりにくい状況になっており、子どもの存在が人生の「リスク」であるという認識につながることで、少子化の遠因となっていることを示唆している。 こうした結果を受けて、本年度は、10年間に8度の全国調査を行った日本版総合的社会調査(Japanese General Social Surveys: JGSS)の累積個票データを用いて、日本人の性別役割分業意識の趨勢を検証した。一般的に、女性の高学歴化は、労働市場への参入を促進し、人々の性別役割分業意識をより柔軟にすると考えられている。しかしながら、女性の進学率や就業率の上昇がありながらも、性別役割分業意識の変化はそれに呼応した動きを見せていなかった。若年世代の未婚女性の場合、逆に、固定的な性別役割分業意識をもつようになってきているようである。日本社会では、本人の意志にかかわらず、結婚や出産後に女性が仕事を継続しづらい状態がつづいており、共働きであったとしても、必ずしも夫の家事や育児の頻度が高まるわけではない。当人同士の自由裁量に基づいて結婚が成立するようになりつつある日本社会において、このような状況が是正されない限り、男女双方にとって現実の結婚が魅力的であるとは言い難く、晩婚化・非婚化は避けられないであろう。性別や婚姻状態を問わず、仕事と生活を両立できる環境の早急な整備が望まれる。
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