Research Abstract |
21年度「研究実施計画」に基づき,1.実験動物から初代肝細胞系の確立,2.DNAマイクロアレイ解析を行い,AsAレベルに影響を受ける遺伝子発現の検証を実施した. AsAは,生体内での有効なフリーラジカルスカベンジャーであり,これまでに疾病予防との関係について多くの臨床研究・疫学研究等が行われている.体内ではAsAがレドックスシステムに関与することで,多くの遺伝子発現機構に影響を与える可能性が考えられる.そこで,ヒトと同様に体内でAsA合成のできないODSラットから,コラーゲナーゼ灌流法により初代肝細胞を採取し,培養液中のAsAレベルの違いによって初代肝細胞系の遺伝子発現にどのような影響をもたらすかを検討した. 試験にはODSラット(オス)の初代肝細胞を用い,培養液中のAsA濃度がそれぞれ5 mM,0.05 mM,0mMとなるように調整し,5%CO_2, 37℃下において48時間培養後,DNAマイクロアレイ解析(Affymetrix, Inc.)を行った.解析で得られた数値データに対し,シグナル値の補正,総強度正規化を行い,培養液中AsA濃度の変化に伴い発現変動した遺伝子を抽出した.また,発現変動が認められた遺伝子については,再度リアルタイムRT-PCRによって,発現変動の再確認を行った. その結果,培養液中AsA濃度の上昇に伴い,lysyl oxidase(Lox)やHRAS-like suppressor family, member5(Hrasls 5)などを含む多数の遺伝子発現の上昇が認められた.また,培地中AsA濃度の減少に伴い,発現変動をする遺伝子も認められたが,SOD(superoxiside dismutase)やglutathione reductase(GSR)等の抗酸化遺伝子の発現には,顕著な差が認められなかった.培養液中AsA濃度の変化に伴い発現変動した遺伝子について,Spotfire(TIBCO Software Inc)によりPathway Map,GO,SOMによる解析を行ったところ,多種の遺伝子とAsAとの関連性が認められ,AsAは体内レドックスシステムやそれとは異なる経路を介して、生体防御機構に重要な遺伝子発現変動をもたらすことが示唆された.
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