2010 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠高血圧症候群の病態に対する植物性ポリフェノールの有効性と作用機序
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21700760
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
向井 友花 青森県立保健大学, 健康科学部・栄養学科, 助教 (60331211)
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / 一酸化窒素 / 血液凝固線溶系 / 臍帯血管 / 胎盤 / 組織型プラスミノーゲン活性化因子 / PAI-1 / TF経路阻害因子 |
Research Abstract |
前年度は、妊娠高血圧症候群(以下、妊娠高血圧)の病態における酸化ストレスの観点から検討し、植物性ポリフェノールを含むアズキ抽出物による顕著な血圧上昇抑制作用は認められなかったものの、活性酸素消去酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(Mn-SOD)の腎皮質における発現量の増加から、アズキ抽出物が酸化ストレスの軽減に一部関与している可能性を示した。一方妊娠高血圧の病態には、血管内皮依存性弛緩因子である一酸化窒素(NO)の産生低下に起因する血管内皮機能障害と血液凝固の亢進もその進展に関与することが知られている。そこで本年度は、妊娠期のNO欠乏が母体と胎児の血管における血液凝固線溶系バランスに及ぼす影響を明らかにするため、L-NAME投与によりNO産生が抑制された妊娠ラットを作製し、母ラットの大動脈および胎盤に加え、臍帯血管における血液凝固線溶系因子の発現を調べた。L-NAME投与群では、血圧の顕著な上昇と蛋白尿の亢進が認められ、胎仔数および重量、胎盤数および重量はいずれも有意に減少した。組織学的には、胎盤の基底脱落膜の菲薄化や浮腫状に変性した胎盤絨毛が迷路層の一部に認められた。また臍帯血管と胎盤において、線溶系因子である組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)mRNAの発現が有意に減少し、変性した胎盤絨毛部位に免疫組織化学的に強いPA阻害因子(PAI-1)の発現が認められた。凝固系因子である組織因子(TF)とTF経路阻害因子(TFPI)の発現には変化はなかった。これらのことから臍帯血管および胎盤では相対的に血液凝固系が亢進していることが推察された。一方母体大動脈においては、tPA発現は増加しTFPIの発現は減少した。以上の結果から、妊娠期のNO欠乏は、母体循環だけでなく胎児胎盤循環においても血液凝固線溶系バランスの変動を惹起し、妊娠高血圧の進展および胎児発育不全に関与する可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)