2011 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠高血圧症候群の病態に対する植物性ポリフェノールの有効性と作用機序
Project/Area Number |
21700760
|
Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
向井 友花 青森県立保健大学, 健康科学部・栄養学科, 助教 (60331211)
|
Keywords | 妊娠 / フルクトース / 妊娠高血圧症候群 / 胎児 / 血糖値 / 脂質代謝 |
Research Abstract |
フルクトースの過剰摂取は、ヒトや動物において糖・脂質代謝異常を引き起こす。また腎肥大や血管壁の肥厚、血管弛緩作用の低下といった血管内皮機能障害を誘導し、高血圧の発症要因となることも知られている。しかしながら、妊娠期のフルクトース過剰摂取と妊娠高血圧症候群との関連や植物性ポリフェノールの影響についてはほとんど知見がない。 そこで本年度はまず、妊娠期の母体の血圧や糖・脂質代謝および胎児の発育にフルクトース過剰摂取が及ぼす影響を検討した。妊娠ラットに10%(w/v)フルクトース溶液を妊娠期を通して自由摂取させたところ、収縮期血圧や体重に増加は認められなかったが、妊娠20日目の母体の肝臓重量は有意に増加した。肝臓中の脂質代謝に関連する因子のmRNA発現量は、転写因子SREBP-1cおよび脂肪酸合成酵素(EAS)の発現が有意に上昇し、アシルCoAオキシダーゼ(ACO)の発現が有意に低下した。母体の血漿では、血糖値、インスリンおよびレプチン濃度が有意に高値であった。妊娠20日目に子宮内から摘出した胎児および胎盤の数や重量には影響を及ぼさなかったものの、胎児の肝臓においてSREBP-1cのmRNA発現量が有意に増加していた。次に、フルクトース過剰摂取に起因する妊娠期の代謝異常を植物性ポリフェノールにより軽減できるかを検討するため、これまでに高血圧や臓器中の酸化ストレスを軽減する作用が見出されているアズキポリフェノールをフルクトース摂取妊娠ラットに混餌投与した。その結果、母体の血糖値や血中脂質に顕著な変化は現れなかったものの、肝臓中のSREBP-1cおよびFASのmRNA発現量に低下傾向が認められた。 以上より、妊娠期のフルクトース摂取は、母体に対し高血糖や肝臓脂質合成遺伝子発現の上昇、β酸化遺伝子発現の低下といった妊娠期の糖・脂質代謝異常を誘導する可能性が示唆された。さらに胎児の肝臓での脂質合成転写因子の発現を上昇させたことから、仔の出生後の脂質代謝にも影響を及ぼすことが推察される。またアズキポリフェノールは妊娠期の糖・脂質代謝異常に対し顕著な代謝改善作用は示さなかったものの、母体肝臓中の脂質合成関連因子の発現を一部抑制し、脂質代謝制御に一部関与している可能性が示唆された。
|
Research Products
(8 results)