2010 Fiscal Year Annual Research Report
食用植物油による生活習慣病進展に関わる機序の解析研究
Project/Area Number |
21700780
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Research Institution | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
Principal Investigator |
内藤 由紀子 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病態ゲノム医学部, 室長 (80426428)
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Keywords | 循環器・高血圧 / 脂質 / 薬理学 / 食品 |
Research Abstract |
近年、生活習慣病の増加に伴って、その予防や治療方法に注目が集まると同時に、日常的に摂取する食品の有効性や有害性等への関心も高まっている。そのような中、生活習慣病モデル動物の一種の脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)にカノーラ油を唯一の脂肪源として与えると、生存日数が短縮することが報告されている。そこで本研究ではこのメカニズムを解析することを目的とした。前年度の実験で、脳卒中症状、腎傷害等がまだ観察されないカノーラ油の投与初期(投与第2週)に、血中脂質レベルの上昇が認められたことから、血中脂質上昇を阻害することによって、脳卒中発症や病態生理学的変化が影響を受けることが推察された。今年度は、SHRSPにカノーラ油摂取と並行して、PPARαアゴニストで高脂血症治療薬であるクロフィブラート(Clo)を投与し、その効果を調べた。雄性SHRSPを4群に分け、カノーラ油群、大豆油群(対照群)、カノーラ油+Clo群、大豆油+Clo群とし、10w/w%カノーラ油または大豆油含有無脂肪精製粉末飼料を7週間自由摂取させ、並行して溶媒またはClo 300mg/kgを強制経口投与した。投与期間中、カノーラ油群および大豆油群で、それぞれ10例中4および2例死亡し、脳卒中発症はそれぞれ8および5例であった一方、両Clo併用群には死亡例および脳卒中症状が認められず、カノーラ油群とカノーラ油+Clo群間に差が認められた。剖検時の脳の観察では、カノーラ油群では7例に出血が認められたのに対し、大豆油群では3例であった。カノーラ油群の血漿中トリグリセリド、リン脂質およびLDL-コレステロールレベルは、大豆油群と比較して上昇したが、カノーラ油+Clo群では減少した。以上の結果から、Clo投与により、カノーラ油摂取によって誘導される血漿脂質の上昇および脳卒中の発症が抑制されることが明らかとなった。
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