Research Abstract |
本年度は,義務教育段階における科学的素養育成のための具体的方策について検討を行った。特に,フランスの義務教育段階における「科学的技術的教養」育成の取り組みに着目し,科学的テクノロジー的教養の育成に向けて,科学教育カリキュラムにどのように具現化され,実践されているのかについて分析した。その結果,以下の点が明らかとなった。 (1)義務教育段階における科学教育では,すべての児童・生徒に科学的テクノロジー的教養を習得させるために,学習内容と学習方法を明示した,一貫性のある教育プログラムが作成されている。また,義務教育段階を3つに区分し,各段階で習得すべき科学的テクノロジー的教養が具体的に提示されている。 (2)科学的テクノロジー的教養を育成するため,科学に関わる教科の授業に,児童・生徒自身による事象への直接的な働きかけを中心に据えた,「探究の手続き」を導入することが求められている。「探究の手続き」では,学習テーマについて学習者の疑問を喚起し,その疑問を実際的活動により解決していくことで知を構築するとともに,さらに構築した知を新たな文脈に適用するプロセスがとられている。これにより,科学的テクノロジー的教養を構成する知識,能力,態度を総合して用いることのできる,コンピテンスの育成が図られている。 (3)児童・生徒の科学的テクノロジー的教養の習得状況を把握するために,個人票簿が作成されており,(1)科学的テクノロジー的手続きの実践,(2)様々な科学の領域における知識の利用,(3)環境や持続可能な開発に関わる問題を理解するための知識の活用,の3つの観点から評価が行われている。評価の具体的指針となる規準一覧に示された各観点の具体的内容は,小学校からコレージュにかけて漸次深化するものとなっている。
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