Research Abstract |
今年度の研究では,プロジェクト学習のためのワークショップである京都大学と長野県諏訪地域の中小企業集積との連携による利用者参加のもの作りワークショップを対象とし,対面的なワークショップの場以外の時間,場所で,参加者たちがどのような協同作業をし,そこで情報技術がどういった役割を果たしていたかについて事例分析を行った.その結果,京都大学学生たちのユーザグループでは,携帯電話のカメラ機能を活用して,メンバーたちが日常生活での気付きを共有し合い,欲しいモノのコンセプトを明確化する事例が見られた.一方,長野県諏訪地域の製造業者たちの間では,地域のコミュニティ性をベースに,それが製作における協力関係として効果的に機能するよう「諏訪バーチャル団地」という情報発信,交流のツールの開設が試みられていた.それらのことから,対面的なワークショップの場以外の時間,場所で,情報技術は,アイデアの発見を支援する「ツール」としての役割,そして,地域のコミュニティ性を背景に製造業者たちの協力関係の促進を支援する「場」としての役割を果たしていたことが分かった.さらに,そうした対面的なワークショップの場以外の時間,場所での参加者たちの繋がりや協働を分析する枠組みとして,活動理論の新しい概念である「ノットワーキング」の概念が有効であることが分かった.以上,今年度の研究では,プロジェクト学習のためのワークショップの実践やそこでの情報技術の役割を明らかにすることを通して,フィールド情報学の手法としてのワークショップについての理論的,方法的整備を進めた.
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