2009 Fiscal Year Annual Research Report
人骨に認められる刑罰痕の研究-打ち首・さらし首を例として-
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21700852
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
橋本 裕子 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (90416412)
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Keywords | 骨考古学 / 刑罰 / 打ち首 / さらし首 / 古病理 |
Research Abstract |
本年度は鎌倉時代と室町時代の頭蓋骨に刀傷のあるものについて、関東地方を中心にデータ収集を行った。特に海蝕洞窟や"やぐら"から出土する人骨では、これまで報告書に記載されている以外の刑罰痕跡の有無についても再調査を行った。同時に研究室に鑑定依頼のあった全国各地の人骨についても観察を進めた。また打ち首以外の刀傷やこれらの人骨に認められる古病理学的な所見についても併せてデータを収集した。その中で、兵庫県出石町の宮内堀脇遺跡出土人骨(室町時代)は大腿骨に刀傷があり、また別個体の脛骨には骨梅毒に感染しているという症例が認められた。これまで梅毒の症例は日本で最も古い例として、京都の医師の記録が永正9年(1512)、山梨の住職の日記が永正10年(1513)にそれぞれあるものの、梅毒に感染した人骨の症例はこれまで江戸時代以降の遺跡からしか発見されていなかった。本遺跡出土人骨は木製位牌などの遺物から室町時代の天文年間(1550年代)と推定されており、現在のところ日本最古の梅毒感染の人骨であることが判明した。本資料の研究成果はイギリス形質人類学会(古病理学セッション)、日本人類学会で報告した。特に日本最古の梅毒の症例となった資料については、2009年11月18日の朝日新聞で紹介された。イギリス形質人類学会ではヨーロッパの中世における打ち首の記録(海外資料)や人骨についてのデータを収集し、担当研究者との意見交換を行った。また古病理学の世界的権威であるアメリカ・スミソニアン博物館のOrtner博士とも梅毒についてだけでなく、病理所見の認められる人骨と刀傷のある人骨が同じ場所から出土したことについて、他地域にも同様な例があるか否かについて意見交換を行った。
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Research Products
(6 results)