2010 Fiscal Year Annual Research Report
海洋細菌群集の共同作業?-水圏の有機物代謝過程での“社会主義"的働き-
Project/Area Number |
21710011
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大林 由美子 横浜国立大学, 工学研究院, 研究教員 (60380284)
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Keywords | 水圏物質循環 / 微生物ループ / 海洋細菌群集 / 有機物 / 細胞外酵素 / 海洋生態系 / 微生物活性 / タンパク質分解酵素 |
Research Abstract |
本研究では、海洋における有機物代謝過程について、海洋細菌群集の組成と機能に着目し、水圏生態系での高分子有機物再利用系の動態を知ることを目的としている。特に、群集の中での細菌種ごとの機能に注目して、"誰が""何を"し、どのような相互作用があるのかを理解することを目指している。研究全体として、(1)海洋から分離した細菌単離株を用いたアプローチ、(2)マイクロコズムを用いた実験的アプローチ、(3)天然環境の調査による観測的なアプローチを計画し、遂行中である。 (2)のアプローチの一つとして、ポリマー型の有機物(タンパク質)を添加した系とモノマー型の有機物(アミノ酸)を添加した系、何も添加していない系(対照区)を作成し、海水中の細菌群集の反応を追跡・比較するマイクロコズム実験を行った。北太平洋亜熱帯域で実験を行った結果、アミノ酸添加区では添加1日後には微生物群集構造が大きく変化するのに対し、タンパク質添加区では少し遅れて変化すること、それぞれの有機物添加後に活発に増殖する細菌種はアミノ酸添加区とタンパク質添加区とで異なることがわかった。また、系内の細胞外加水分解酵素(タンパク質分解酵素)の変化にも違いが見られた。これらの結果は、細菌のエサとなる有機物が添加された場合、有機物のタイプによって、応答する微生物種が異なること、また応答の仕方が異なることを示している。すなわち、細菌種によってそれぞれの"得意分野"が異なることが示唆された。一方、同様の実験を北太平洋亜寒帯域で行ったところ、いずれの添加区でも対照区との差が見られなかった。すなわち、亜寒帯域の測点では、エサとなる有機物以外の要因が海水中の細菌群集全体の活性を律速していたと考えられる。なお、これらの結果に系内の有機物(タンパク質、アミノ酸)の分析結果等をあわせてより詳細な解析を進める予定である。
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Research Products
(4 results)