2009 Fiscal Year Annual Research Report
環形動物を介した多環芳香族炭化水素の高濃度集積及び高速分解機構の解明
Project/Area Number |
21710015
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
齋藤 敦子 Toho University, 理学部, 講師 (50424718)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / GC / MS / 干潟 / 環形動物 / 糞塊 / イワムシ |
Research Abstract |
本研究では、千葉県市原市養老川河口干潟に棲息する環形動物のイワムシ(Marphysa sanguinea)糞塊中での、多環芳香族炭化水素(PAHs)の集積及び分解機構を解明するために、底質の極表層及び条件を変化させて放置した糞塊中のPAHs濃度を、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて定量した。また、糞試料の粒度分布、全炭素量の分析も行い、同じ環形動物であるタマシキゴカイ(Arenicola brasiliensis)の糞塊と比較を行った。底質表層試料の分析結果より、底質の極表層からはPAHsを高濃度に含む画分を見出すことは出来なかった。これに対して、今回ブランクとした海水中の懸濁成分から、高濃度のPAHsが検出されたことから、今後これらがイワムシ糞塊中でのPAHsの高濃度濃縮の原因となっているか、詳しく調べて行きたいと考えている。排泄直後のイワムシの糞を一旦凍結し、その後解凍した試料を用いて、糞中PAHs濃度の経時変化を測定した。その結果、凍結・解凍操作をした糞試料では、2時間放置によるPAHsの濃度低下は見られず、糞中PAHsの濃度低下には、微生物や酵素等、凍結・解凍操作により失活する因子が関与することが示唆された。一方、暗及び明条件下で放置した糞塊中のPAHs濃度に、大きな違いは無かったことから、糞中PAHsの濃度低下には、太陽光による光分解はほとんど関与しないことが分かった。また、イワムシ及びタマシキゴカイの糞の粒度分析及び全炭素量分析の結果より、イワムシの糞ではタマシキゴカイと比べて、粒子径の小さな成分を多く有し、全炭素量も、PAHs同様にタマシキゴカイの約10倍高い値を示すことが分かった。これらの結果より、イワムシはタマシキゴカイと比べて、高濃度の有機炭素とPAHsを含むような小さな粒子を摂食している可能性が示唆された。
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