2010 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄本島南部における海底地下水湧出がサンゴの生息環境に及ぼす影響
Project/Area Number |
21710019
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
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Keywords | 海底地下水湧出 / サンゴの生息環境 / 沖縄本島南部地域 / 栄養塩 |
Research Abstract |
サンゴ礁が形成される島嶼部の多くは帯水層が空隙の多い石灰石で形成されており,水循環に占める海域への地下水流出(海底地下水湧出)が表流水より多くなるため,陸域からの栄養塩類の負荷量の管理は他の沿岸域と比べても非常に重要であるが,これまで,沖縄本島において海底地下水湧出の水量・水質に関連した報告はなされていない. 本研究では,(1)海底地下水湧出および地下水の現地観測により,沖縄本島南部地域における海底地下水湧出の湧出特性および水質形成機構を解明し,(2)広域地下水流動モデルを用いた数値解析により海底地下水湧出量を推定し,その値に(1)で観測された海底地下水湧出中の栄養塩濃度を乗じることで沖縄本島南部地域における栄養塩負荷量を算出し,(2)同沿岸域における海底地下水湧出がサンゴの生息環境に及ぼす影響を評価した. (1)現地観測の結果,沖縄本島南部の西部海岸で観測された海底地下水湧出は平均湧出速度は14.4m/dayと世界の他地域と比べても非常に速く,沖縄本島南部地域には石灰岩の割れ目等から局所的に非常に速い流速をもって湧出する湧出タイプが多くみられた.また,海底地下水湧出中の硝酸態窒素濃度は平均15.5mg/Lと環境基準値を超える値を示した.(2)沖縄本島南部沿岸域の水理地質構造及び水文・気象データを整理し広域地下水流動モデルを構築し,海域への地下水湧出量を推定した結果,沖縄本島南部地域から海底地下水湧出量は,84,000m3/day~95,000m3/dayと推定された.この値に,1993年から2005年までの地下水中の硝酸態窒素濃度の平均値10.1mg/Lを乗じると,84.4kg/day~96.0kg/dayの窒素負荷量が同海域に流出していることになる.この値は後背地の農地で使用される約1年分の窒素負荷量に相当する値である.(3)サンゴが形成される熱帯・亜熱帯の海水は貧栄養であり,富栄養化した海域や水質の悪化した陸水の供給はサンゴの生育にとって不敵な環境となる.沖縄県内25海域で栄養塩濃度とサンゴの状態を観測した調査報告によると,全窒素が0.1mg/L,全リンで0.01mg/L以上の場所ではサンゴの生育の良い地点はなかったと報告しており,沖縄本島南部沿岸域における海底地下水湧出がサンゴの生息環境に影響を及ぼしている可能性は十分に考えられる.
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